今年度から新たにスタートした「20世紀検証シリーズ」の第一弾として、戦後、板橋に暮らした画家、井上長三郎、寺田政明らが結成した「新人画会」の活動を検証します。
「新人画会」は、第二次世界大戦の末期の、1943年に井上長三郎、靉光、糸園和三郎、麻生三郎、寺田政明、大野五郎、松本竣介、鶴岡政男の8人の画家の交友により結成されました。言論や表現への制限が布かれる時代の中でも、彼らは描きたいものを描き、空襲下の銀座で展覧会を開きました。戦争やメンバーの疎開、死などにより、展覧会は3度しか開かれませんでしたが、彼らの作品や活動は今も語り継がれています。本展は、この「新人画会」を検証する東京初の試みになります。
第1部では「新人画会」結成前も8人の画業を概観します。現存する戦前作品を可能な限り集め、画家たちの修行時代、試行錯誤する様子をご覧いただきます。第2部では、3度開かれた「新人画会」展出品作をご紹介します。これは過去最大の規模の復元となり展覧会が開かれたギャラリーも再現し、まさに「新人画会」展を体感できる展示になります。第3部では、同時期に新人画会メンバーが他の大きな展覧会出品のために描いた作品を紹介します。これにより、「新人画会」展出品作が画家の内的な、プライベートな作品で、大きな展覧会の作品の外部へ向けたものであることが見えてきます。第4部では、戦争直後に靉光、松本竣介が亡くなった後の6人の画家のその後作品を紹介します。戦後の代表作を観ることで、彼らが日本の画壇で大きな役割を果たしたことが明らかになることでしょう。
作品と社会を関連付けて読み解くことによって、8人の画家とその作品の魅力、そして「新人画会」の意義を考えることができるでしょう。
「絵があるから生きている」これはメンバーの一人、寺田政明さんが戦後に新人画会について語った言葉です。描きたいものを描くこと、生きるということ、新人画会のメンバーの作品を見ながら一度考えてみませんか?