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    レポート
    イメージコレクター・杉浦非水展
    東京国立近代美術館 | 東京都
    整理整頓、完璧です
    グラフィックデザイナーが「図案家」と呼ばれていた時代に、先頭に立って活躍した杉浦非水(1876-1965)。東京国立近代美術館には作品とともに、スクラップなどの資料も数多く寄贈されています。「イメージの収集家」として非水をとらえた展覧会が開催中です。
    会場
    《鳥類写生帖》
    (左下から時計回りで)《植物写生帖 秋之部二》 / 《植物写生帖 冬之部》 / 《無花果図》1890年代 / 《鵜飼船図》1897
    スクラップ類 冊子になったものと、封筒に入れられたものがある
    (左端)《東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通》1927
    (左端)《三越呉服店》1915
    (左から)《東京三越呉服店 本店西館修築落成・新宿分店新築落城》1925 / 《東京三越呉服店 第九回児童博覧会》1917
    (左下から時計回りで)《上野地下鉄ストア十二月一日開店》1931 / 《上野浅草間開通 科学の粋をあつめた地下鉄道》1927 / 《萬世橋まで延長開通 東京地下鉄道》1929年頃
    《非水百花譜》より、左から「やへざくら(八重桜)」「はす(蓮)」(復刻版)愛媛県美術館蔵

    1997年に遺族から非水作品を一括で寄贈された東京国立近代美術館。700点以上の作品は、これまでも各地の展覧会で紹介されてきましたが、今回の目玉は旧蔵資料。非水がなくなるまで手元に残した資料は、ほぼ全てが初公開となります。


    モノクロの写真に囲まれた部屋が、第1章「インプット ─ 世界を写す、集める、撮る」。写生帖、16ミリフィルム、雑誌の切り抜きなど、多数の資料が並びます。


    若い頃から絵を描く事に夢中だった非水。美術家の写生帖は珍しくありませんが、非水の写生帖は「鳥類」「蟲類」などに分けて編集されており、中学時代と60代の写生が混在しています。仕事の為ともいえますが、それにしてもかなりの整頓マニアといえます。



    スクラップも、冊子状に綴じたものはテーマ別で分類。切り抜いたままのものも「猫」「象」などと手書きされた封筒に、整理されて入っていました。


    写真が好きだった非水は、16ミリなどの小型映画にも熱中。動物園で動物を撮影し、コマで動物の動きを確認して仕事に活かしていると語っています。


    ムービーには、興味深い映像も残っています。親交があった藤田嗣治や、非水の妻で歌人の翠子らとともに、非水自身も写っていますが、なんと舌を出しておどける姿が。ポートレイトではきちっとした佇まいが多い非水の、意外な一面が垣間見えます。


    第2章「アウトプット ─ 図案を創る、広める」は、非水の作品。前後期でほぼ作品は入れ替えられますが、前期だけでも200点超という豪華版です。


    作品はあえて額装ではなく、簡易なカバーのみで展示されています。これは非水の考え方にも沿うもので、絵画や彫刻などの「純粋芸術」に対し、装飾美術や商業美術は「目的芸術」であり、'鑑賞’だけを目指してはいない、という意図です。


    さらに、会場入口の大きな会場写真は、日本初の図案展覧会と言われている1912年の「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」の風景ですが、今回の会場は、この時の非水作品の展示手法に倣ったものでもあります。


    今回は展示室内の柱も、ポスタータワーになっています。通常よりかなり高い場所まで、非水の作品で埋め尽くされています。


    ポスター、本の装丁、パンフレット、パッケージデザインと、多彩な分野で活躍した非水。アール・ヌーヴォーの枠で紹介されがちですが、その表現は自由自在。どんなオーダーにも応える事ができる職業デザイナーでした。


    非水は図案の仕事とは別に、自らの作品集も作っています。《非水百花譜》は美しい植物図だけでなく写真入りで植物の解説も掲載。まるで植物図鑑のような、異色の作品集です。


    非水は帝国美術学校(現・武蔵野美術大学)の工芸図案科長、多摩帝国美術学校(現・多摩美術大学)の校長兼図案科主任教授として、教育にも従事。教育書や資料集にも携わり、自らのアウトプットを、次世代のインプットにつなげていきました。


    第2章の作品は、前期は花鳥と女性、後期は動物と風景を中心に展示されます。東京国立近代美術館で非水の展覧会を開催するのも、2000年の「杉浦非水展 都市生活のデザイナー」以来、19年ぶり。巡回はせず、同館のみでの開催となります。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年2月14日 ]


    ※表記が無いものは、全て東京国立近代美術館蔵


    杉浦非水のデザイン杉浦非水のデザイン

    杉浦 非水(著)

    パイインターナショナル
    ¥ 3,024

    会場
    会期
    2019年2月9日(土)~5月26日(日) ※展示替え有り
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日(2月11日、3月25日、4月1日、4月29日、5月6日は開館)、2月12日(火)、4月9日(火)(※本展のみ)、5月7日(火)
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.momat.go.jp/
    料金
    一般 500(400)円 / 大学生 250(200)円

    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会、賛助会員(同伴者1名まで)、MOMAT支援サークルパートナー企業(同伴者1名まで、シルバー会員は本人のみ)、キャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。所蔵作品展の観覧料でご覧いただけます。
    ※割引・無料には入館の際、学生証・運転免許証など年齢のわかるもの、会員証、社員証、障害者手帳をご提示ください。

    【無料観覧日】
    2019年2月24日(日)、3月3日(日)、4月7日(日)、5月5日(日)、5月18日(土)(国際博物館の日)
    ※2月24日(日)は天皇陛下御在位30年を記念して入館無料。
    展覧会詳細 イメージコレクター・杉浦非水展 詳細情報
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