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レポート
装幀から舞台まで600点でたどる雪岱の仕事「密やかな美 小村雪岱のすべて」(読者レポート)
あべのハルカス美術館 | 大阪府

大正から昭和初期にかけて活躍した美術家、小村雪岱。大阪ではじめての展覧会があべのハルカス美術館で開催中です。前後期の展示替えをあわせて約600点の作品や資料により雪岱の全貌にせまる、ファンにとっても、はじめて雪岱をみる人にとっても贅沢な内容です。



入口すぐに《青柳》《落葉》《雪の朝》の3作品


入口すぐには《青柳》《落葉》《雪の朝》が展示されています。雪岱が10代を過ごした日本橋界隈を描いた37歳のころの作品です。彼の作品でしばしば使われる俯瞰の構図、柔らかい色彩。人物は登場していないのに、そこには物語があります。

観る者の想像力をかきたててくれます。そして現代の私たちがみても感じる洗練されたデザイン。「雪岱の世界へようこそ」と出迎えられたような気持ちになります。



展示風景


東京美術学校時代に学友に泉鏡花の小説を教えてもらい、雪岱は鏡花の小説世界に夢中になります。そして明治42年の夏、雪岱は偶然、泉鏡花と出会うことに。まさに運命的なこの出会いが、その後の雪岱の人生の転機となりました。



装幀を担当した泉鏡花『日本橋』


出会いから5年後。大正3年、泉鏡花書下ろしの『日本橋』の装幀を雪岱が担当します。この装幀で雪岱の名前は広く知られ、それ以降、鏡花本のほとんどを担当します。そして鏡花だけではなく、多くの作家の本の装幀を手がけ、その数は200冊を超えるそうです。



鏡花以外の作家の本の装幀



展示風景


会場には『日本橋』をはじめ、鏡花以外の作家の装幀本も数多く並びます。今見てもなお美しい本は、当時手にした人はさぞ大切にしただろう……そんな想像まで掻き立てられます。



わかもと製薬が全国販売店に向けて顧客贈呈用に販売した団扇



珍しい肉筆画も展示されています


その他、新聞の挿絵や歌舞伎の舞台装置など、彼が手掛けた幅広い作品を鑑賞できます。どの作品(仕事)にも共通するのは、すべてを語らず鑑賞者の想像にゆだねてくれる「余白」があることです。それは肉筆画にも通じ、かすかな表情、手の動きやゆるやかに揺れる柳といった些細な描写が、わたしたちの感情を深く動かしていきます。



小村雪岱のポートレート


本展は、彼の作品そのものの美しさだけではなく、多くの人との協働の中で仕事をしてきた美術家であったことにも光をあてています。泉鏡花をはじめとする作家や演劇関係者たちとの互いのリスペクトが、雪岱独自の美意識を確立させていったのでしょう。

膨大な展示数から、制作に対する真摯な姿勢と衰えることのない熱量がじわじわと体に染み込んでくる、そんな展覧会です。



展示風景



里見弴「闇に開く窓」挿絵原画

※写真は内覧会時に撮影、前後期で展示替えがあります。


[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2025年12月26日 ]

会場
あべのハルカス美術館
会期
2025年12月27日(Sa)〜2026年3月1日(Su)
開催中[あと25日]
開館時間
火~金 / 10:00~20:00
月土日祝 / 10:00~18:00
*入館は閉館30分前まで
休館日
2025年12月31日(水)、2026年1月1日(木)、2月2日(月)
住所
〒545-6016 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話 06-4399-9050
公式サイト https://www.aham.jp/
料金
当日
一般 1,800円
大高生 1,400円
中小生 500円

前売・団体
一般 1,600円
大高生 1,200円
中小生 300円


※団体は15名様以上。
※前売券は9月27日(土)から12月26日(金)までプレイガイドなどで販売。
※障がい者手帳をお持ちの方は、美術館チケットカウンターで購入されたご本人と付き添いの方1名まで当日料金の半額。

【チケット販売所】
あべのハルカス美術館ミュージアムショップ(美術館開館日のみ)、あべのハルカス美術館HP(オンラインチケット)、近鉄駅営業所、ローソンチケット、イープラス、セブンチケットなど。
※チケット購入の際にプレイガイドによって各種手数料が発生する場合がございます。
展覧会詳細 密やかな美 小村雪岱のすべて 詳細情報
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