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レポート
交流の美術史 ─ 東京国立博物館「韓国美術の玉手箱」(レポート)
東京国立博物館 | 東京都
日韓国交正常化60周年を記念。トーハクと韓国国立中央博物館の共同企画展
高麗時代の仏教美術や青磁、朝鮮王朝の宮廷絵画や服飾品など多彩な展示品
韓国国立中央博物館からは17件が来日。15件が日本初公開という貴重な機会

今年は、昭和40年(1965年)の日韓国交正常化から60年を迎える節目。高麗時代の仏教美術や青磁、朝鮮王朝の宮廷文化まで、韓国美術の名品を紹介する展覧会「韓国美術の玉手箱」が、東京国立博物館で開催されています。

東京国立博物館と韓国国立中央博物館による共同企画。長い歴史の中で育まれてきた韓国美術の豊かな精神性と、洗練された造形美を一望できる構成です。


東京国立博物館「韓国美術の玉手箱」 会場は、階段を上がった2階の特別1・2室
東京国立博物館「韓国美術の玉手箱」 会場は、階段を上がった2階の特別1・2室


会場は2章構成で、第1章「高麗―美と信仰」では、仏教美術を中心に高麗時代の精神世界を紹介します。まず注目は、韓国国立中央博物館の宝物《五百羅漢図(第九十二守大蔵尊者)》です。

白髪の尊者が老木と机の間に座る姿が描かれ、蓮華座上の瓶から放たれる一筋の光が印象的です。墨を基調としつつ、円光や袈裟には彩色と金泥が施され、信仰と装飾美が調和しています。


宝物《五百羅漢図(第九十二守大蔵尊者)》高麗時代・高宗22年(1235)韓国国立中央博物館
宝物《五百羅漢図(第九十二守大蔵尊者)》高麗時代・高宗22年(1235)韓国国立中央博物館


本展では、東京国立博物館所蔵の《五百羅漢図(第二十三天聖尊者)》も並べて展示されています。ともに金義仁(キム・ウィイン)らが発願した五百羅漢図の一幅で、十数点が現存しています。

制作年が明記された高麗仏画としては現存最古の例で、蒙古の侵攻という厳しい時代に、国土安寧と王の長寿を願って描かれました。端正な形態と緻密な彩色が特徴です。


《五百羅漢図(第二十三天聖尊者)》高麗時代・高宗22年(1235)東京国立博物館
《五百羅漢図(第二十三天聖尊者)》高麗時代・高宗22年(1235)東京国立博物館


本展のメインビジュアルを飾る《観音菩薩坐像》は、右膝を立て左足を垂らす遊戯坐の姿勢をとる、優美な像です。高麗時代の彫刻では現存唯一の作例とされています。

近年の調査により、材質はマツとモミ、造立年代は13世紀と判明しました。像内から発見された経典や後世の納入品もあわせて展示され、信仰の歴史を今に伝えます。


《観音菩薩坐像》高麗時代・13世紀 韓国国立中央博物館
《観音菩薩坐像》高麗時代・13世紀 韓国国立中央博物館


《青磁陽刻饕餮文香炉》は、中国古代青銅器の形態を模した高麗青磁の名品です。胴部には饕餮文、脚部には蝉文が刻まれ、古代礼制との関わりを示します。

北宋の礼制受容を背景に、中国文献の図像が高麗青磁に反映されたことを伝える重要な作例で、当時の国際的な文化交流の一端がうかがえます。


《青磁陽刻饕餮文香炉》高麗時代・12世紀 韓国国立中央博物館
《青磁陽刻饕餮文香炉》高麗時代・12世紀 韓国国立中央博物館


第2章「朝鮮王朝の宮廷文化」では、王権と儒教思想を背景にした華やかな宮廷美術を紹介します。中心となるのが《華城園幸図屛風》です。

正祖が母の還暦を祝って行った華城行幸の様子を描き、孝行や敬老、軍事力を象徴的に表現。王の威厳と民衆の活気が対照的に描かれています。


《華城園幸図屛風》朝鮮時代・正祖19年(1795)韓国国立中央博物館
《華城園幸図屛風》朝鮮時代・正祖19年(1795)韓国国立中央博物館


《闊衣(ファロッ)》は、もとは宮中女性の礼服でしたが、19世紀末以降は婚礼衣装として広く用いられるようになりました。新婦が幣帛を捧げる場で着用されます。

赤地に蓮や牡丹、鳳凰など吉祥文様が刺繍され、健康や幸福への願いが込められています。衣装からも、朝鮮王朝の美意識と信仰観が読み取れます。


《闊衣》20世紀初 韓国国立中央博物館
《闊衣》20世紀初 韓国国立中央博物館


高麗から朝鮮王朝に至る韓国美術の多彩な魅力を、信仰・制度・生活文化の視点から丁寧に紹介する展覧会。国交正常化60年という節目に、隣国の美術と向き合う貴重な機会となりそうです。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年2月9日 ]

東京国立博物館「韓国美術の玉手箱 ― 国立中央博物館の所蔵品をむかえて―」会場
東京国立博物館「韓国美術の玉手箱 ― 国立中央博物館の所蔵品をむかえて―」会場
会場
東京国立博物館 本館特別1室・特別2室
会期
2026年2月10日(Tu)〜4月5日(Su)
開催中[あと52日]
開館時間
東博コレクション展の開館時間に準じます。
休館日
毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)、年末年始、
※詳細、その他休館についてはHPにてご確認ください。
住所
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2735
料金
東博コレクション展観覧料でご覧いただけます。
展覧会詳細 韓国美術の玉手箱 詳細情報
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