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    レポート
    ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい
    東京ステーションギャラリー | 東京都
    称賛から反発まで。巨大キャンペーンとその周辺
    英文のロゴ、場所がはっきりしない写真…。国鉄の観光キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」は、それまでの国鉄のイメージを一新し、社会に大きなインパクトを与えました。100点超の資料で「発見(ディスカバー)を発見」します。
    会場
    富士ゼロックスの広告「モーレツからビューティフルへ」
    左から、No.6、No.5、No4のキャンペーンポスター
    ディスカバー・ジャパンのキャンペーンは、1970年10月から1976年12月まで、6年以上にわたって実施されました
    1971年度のディスカバー・ジャパンの目玉のひとつが「お寺」。お寺発の雑誌「季刊ウィズ」も発行されました
    中央のスタンプ台は、岩手県岩泉駅で2013年度の廃線まで使われていました
    中平卓馬「とらわれの旅」(『朝日ジャーナル』1972年12月22日号) ディスカバー・ジャパンが提案した旅のスタイルを辛辣に批判します
    初期のディスカバー・ジャパンのポスターに見られる女性の服装や、横文字との組み合わせは、「アンアン」との類似性が見受けられます
    「行くぜ、東北。」2014年
    ディスカバー・ジャパン(以下:DJ)だけでなく、その周辺も俯瞰する本展。展覧会の冒頭も、富士ゼロックスの広告「モーレツからビューティフルへ」の紹介です。話題になった丸善石油のテレビCM「オー、モーレツ」を引き合いに、価値の転換を訴えました。

    この広告を作ったのは、後にDJを手掛けた電通プロデューサーの藤岡和賀夫(ふじおかわかお)。特定の商品を宣伝するのではなく、広告で社会的なメッセージを伝える手法は、DJでも用いられました。


    富士ゼロックスの広告「モーレツからビューティフルへ」 。雑踏を歩くのはミュージシャンの加藤和彦

    あまり知られていませんが、DJの直前には、テスト版ともいえるキャンペーン「Make Your Country 東北」が実施されています。

    英語のタイトル、不明確な場所、実態とかけ離れたモデルなど、後のDJに繋がる要素が見られるこの広告。中年以上の層からは反発を受けた反面、若者からは高い評価を得ました。


    「Make Your Country 東北」

    DJのキャンペーンが始まったのは、大阪万博閉幕直後の1970年10月。経済成長にひた走った60年代から、新たな時代に入った70年代のアイコン的な存在です。

    当時増えつつあった若い女性の少人数・単独旅行にターゲットを定め、キャンペーン地域も東京・名古屋・大阪に限定。「美しい日本と私」をテーマに作られた数々のポスターは、今なお新鮮に感じられます。


    ポスターを中心に、100点以上の資料が並びます

    従来の国鉄の広告は駅・車両内のポスターが主流でしたが、DJは多くの宣伝媒体が用いられました。

    上部に協賛ポスターが入ったスタンプ台を、全国1400の駅に設置。無料配布の季刊誌は宣伝ツールであるともに、広告収入源にもなりました。

    上野や東京駅など主要30駅には、3年間の期限付きで「ディスカバー・ジャパン・タワー」も設置。タワーにも広告スペースが設けられ、キャンペーンを予算面で支えました。


    順にスタンプ台、季刊誌、「ディスカバー・ジャパン・タワー」の写真が入った記念入場券

    DJを生んだ背景として紹介されているのが、雑誌「アンアン」。こちらは大阪万博開始直前の1970年3月の創刊です。

    国鉄の大キャンペーンだったDJは、その影響力が強いこともあり、反発の声も上がりました。強く反発したのは、写真家の中平卓馬。逆に中平の意見に異議を唱えたのは、テレビディレクターの今野勉。伝説的ともいえるキャンペーンを、礼賛一辺倒ではなく負の側面まで紹介していくのは思い切った試みです。


    会場の最後は、2006年のキャンペーン「Japanese Beauty ホクリク」と、現在のJR東日本のキャンペーン「行くぜ、東北。」

    東京駅舎内にある東京ステーションギャラリーですが、実はここで鉄道に関連する展覧会が行われるのはちょっと珍しく(鉄道博物館で開催される事が多いです)、東京駅丸の内駅舎が創建されてちょうど100年になる事を記念したものです。

    この後も「スペシャル・オープン・ウィーク 駅の美術館で楽しむ13日間」(11/18~11/30)、「東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶」(12/13~3/1)と、記念企画が続きます。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年9月12日 ]

    DISCOVER JAPAN 40年記念カタログ

    藤岡 和賀夫 (編さん)

    PHP研究所
    ¥ 1,058


    ■ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい に関するツイート


     
    会場
    会期
    2014年9月13日(土)~11月9日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    ※金曜日は20:00まで
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜休館)
    住所
    東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅 丸の内北口 改札前
    電話 03-3212-2485
    公式サイト http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
    料金
    一般900円 高校・大学生700円 小・中学生400円
    ※20名以上の団体は100円引き
    ※障がい者手帳等持参の方は100円引き、その介添者1名は無料
    展覧会詳細 「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい」 詳細情報
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