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    レポート
    PARIS オートクチュール ─ 世界に一つだけの服
    三菱一号館美術館 | 東京都
    女子なら誰でもうっとり
    19世紀のパリで誕生したオートクチュール。洗練されたデザインと職人の高度な技術に支えられ、時代を象徴するファッションを生み出していきました。フランスからドレスを中心に小物、デザイン画、写真など約130点が来日、会場は三菱一号館美術館です。
    (手前)ジャン=ポール・ゴルチエ「イヴニング・ドレス《青い鳥》」2006年秋冬
    (左から)クリスチャン・ラクロワ「イヴニング・コートドレス《ファエナ》」1987年秋冬 / ウォルト「イヴニング・ケープ」1898年-1900年頃
    (左から)ジャック・グリフ「ディナー・ドレス」1947年秋冬 / グレ「室内用ドレス」1944年春夏
    (左から)ブリュイエール「ウェディング・ドレス」1944年 / ルシル・マンガン「イヴニング・ドレス」1950年頃 / カルヴェン「イヴニング・ドレス《恍惚 》」1945年春夏
    (左から)ジャック・エイム「室内用ドレス《シャレー》」1951年秋冬 / ジャック・ファット「ドレス」1948年秋冬 / ジャック・エイム「カクテル・ドレス《フラクシネル》」1949年春夏
    (左から)バレンシアガ「テーラード・スーツ」1952年秋冬 / アレキサンダー・マックイーンによるジヴァンシィ「パンツスーツ」1999年春夏 / ピエール・カルダン「テーラード・スーツ」1958年秋冬 / クリスチャン・ディオール「ドレスとジャケットのアンサンブル《ベルニク(陣笠形の貝 )》」1950年秋冬
    (左から)クリスチャン・ディオール「カクテル・ドレス《コティヨン》」1956 年秋冬 / バルマン「カクテル・ドレス《ソルヴェイグ》」1957年秋冬 / バルマン「アフタヌーン・ドレス《ジョッキー・クラブ》」1953年春夏 / ジャン・デセス「カクテル・ドレス」1955年頃
    ピエール・カルダン「ドレス《的》」1966年春夏 / クレージュ「ジャケットとドレスのアンサンブル」1965年春夏 / カール・ラガーフェルドによるシャネル「コートドレス」1995年秋冬 / シャネル「テーラード・スーツ」1960年頃 / ウンガロ「デイ・コート」1968年春夏
    ラファエル「コレクションのためのデザイン画」1948年
    日本語では「高級婦人仕立服(業)」と訳されるオートクチュール。あまり知られていませんが、オートクチュールはフランス国内の制度です。パリ・クチュール組合は「アトリエには最低20人の従業員」「一回のコレクションで最低75点提示」などのルールを定めており、これを満たさないとオートクチュールを名乗る事は許されません。

    オートクチュールの基礎を作ったのは、イギリス生まれのシャルル=フレデリック・ウォルト(1825-1895)。パリに渡ったウォルトは1885年に女性向け既製服の店を開店。季節ごとに新作コレクションを発表、今でいうファッションモデルを起用して顧客の前で披露する、など現在につながるスタイルを生み出しました。


    1~2章

    展覧会にはパリ・モードの殿堂であるガリエラ宮パリ市立モード美術館が所蔵する作品から、選ばれた逸品が来日。布の保存には神経をつかう事もあり、これほど大規模なオートクチュール展の開催は極めて異例です。

    一番大きな展示室で展示されている「第3章 贅沢なエレガンス」は、三菱一号館美術館としては珍しく撮影可能(フラッシュ、三脚、セルフィースティックの利用は不可)。30年代を紹介するこの章では、狂乱の時代を経て再び丈が長くなったドレスなどが紹介されています。


    3章

    会場構成はほぼ時代順。オートクチュールの誕生から現在までを通史で辿ります。

    戦争によって物資が不足した40年代には、オートクチュールにも関わらず安価な素材も利用。50年代にはクリスチャン・ディオールが様々なラインのドレスを発表し、一斉を風靡しました。また、この時代はファッション写真も隆盛、ヴォーグ誌などを通じモードを牽引していきます。

    60年代に入るとクレージュやウンガロなど、新しい世代のクチュリエ(オートクチュールのデザイナー)が活躍を始めますが、ファッションを取り巻く環境は大きく変容。モードの中心は徐々にプレタポルテ(高級既製服)に移っていく事となります。


    4~7章

    オートクチュールのメゾン(店)は、1940年代には100以上ありましたが、現在は僅か14。ピンクの羽毛が舞う美しいドレスは、バレンシアガが最後のショー(1967年)で発表した作品。ティオールとともに戦後のパリ・モードを牽引したバレンシアガの撤退は、象徴的な出来事でもありました。

    ちょっと面白いのが、一番最後の小さな展示室で紹介されている写真。写真家のフランソワ・コラールが、クチュリエや職人の手をアップで撮影しました。とても華やかなオートクチュールの世界ですが、支えているのは職人たちによる最高峰の技術です。


    8章

    展覧会は2013年にパリ市庁舎の聖ヨハネ・ホールで開催された「パリ・オートクチュール」展を日本向けに再構成したもの。前述のように極めて痛みやすい作品もあり、最後にご紹介したバレンシアガのピンクのドレスなどは、おそらく二度と海外への出品は適わないと言われています。

    女子なら誰でもため息が出る事も違いなしの、うっとりするようなオートクチュールの世界。三菱一号館美術館の雰囲気にもピッタリあっています。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年3月3日 ]

    オートクチュール: パリ・モードの歴史オートクチュール: パリ・モードの歴史

    フランソワ=マリー グロー (著), 鈴木 桜子 (監修), 中川 髙行 (翻訳), 柳嶋 周 (翻訳)

    白水社
    ¥ 1,296

    料金一般当日:1,700
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


    ■三菱一号館美術館 オートクチュール に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年3月4日(金)~5月22日(日)
    会期終了
    開館時間
    10時~18時 / 金(祝日を除く)のみ10時~20時
    ※10/5より開館時間が変更になりました。
    ※いずれも最終入館は閉館30分前まで
    休館日
    月曜日(但し、祝日と5月2日、16日は開館)
    住所
    東京都千代田区丸の内2-6-2
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://mimt.jp/paris-hc/
    料金
    一般 1,700(1,500)円/高校・大学生 1,000円/小中学生 500円
    ※()内は前売料金
    展覧会詳細 PARIS オートクチュール—世界に一つだけの服 詳細情報
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