本館特別4・5室で開催される本展。第1会場(特別5室)では「御即位」「御誕生」「外国ご訪問と文化交流」「皇后陛下とご養蚕」の4コーナー(「御誕生」は前期:3/5~3/31 のみ)で、皇室ゆかりの優品を紹介します。
「平成」のスタートは昭和天皇崩御の翌日、1989年1月8日からですが、即位に関わる儀式が行われたのは、昭和天皇の喪が明けた翌年の秋。「即位の礼」では、天皇は黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)、皇后は御五衣(いつつぎぬ)に御唐衣(からぎぬ)を重ね、御裳(おんも)を着けた装束でした。
昭和天皇の第一皇子として昭和8年に誕生した天皇陛下。その誕生を祝って衆議院議員一同から献上されたのが、堂本印象《霊峰飛鶴》(展示期間:3/5~3/31)です。堂本印象は、優秀な美術家・工芸家を顕彰した「帝室技芸員」のひとりです。
即位後、両陛下は28カ国を公式にご訪問されています。外国で日本の美術品を紹介される事もありました。岩佐又兵衛《小栗判官絵巻》(全期間展示、巻替あり)は、1998年のイギリスご訪問と、2005年のノルウェーご訪問で紹介されました。旧岡山藩の家老から明治天皇に献上されたものです。
皇后陛下の活動として、ニュースなどでしばしば紹介されるご養蚕。明治に近代化した日本において主要産業だった絹の生産を後押しするため、明治天皇皇后である昭憲皇太后が宮中でご養蚕を始めた事がきっかけです。
皇室では、現在では貴重な蚕種となった純国産種「小石丸」などを養蚕。その糸は、正倉院古代裂の復元など、文化財修復の現場でも活かされています
冠に蚕蛾(かいこが)を付け、右手に繭をもつ天女は、その名も《養蚕天女》。高村光雲が生み出した新しい女神像です(前期・後期で、別の《養蚕天女》を展示)。
第2会場(特別4室)では、両陛下の写真を展示。日本の文化と深いかかわりがある皇室ですが、現在の両陛下も日本の美術や文化には深い理解を示し、国内の美術館、博物館にもしばしば行幸啓されています。
本展に続く『紡ぐプロジェクト』第二弾の特別展「美を紡ぐ 日本美術の名品 ―雪舟、永徳から光琳、北斎まで―」は、5月3日(金・祝)開幕。新しい元号で迎える事となります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年3月4日 ]