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レポート
特別展「新・桃山の茶陶」
根津美術館 | 東京都
発掘された“瀬戸物商店街”
茶陶の歴史において、ひときわ輝いている桃山時代。信楽・備前・伊賀・志野・織部・唐津と、各地で独創的なやきものが多数生まれました。約30年前の展覧会を踏まえて「生産」と「流通」から桃山の茶陶を振り返る展覧会が、根津美術館で開催中です。
(左奥から)美濃《黄瀬戸水指》桃山~江戸時代 個人蔵 / 重要文化財 美濃《黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕》桃山~江戸時代 和泉市久保惣記念美術館
美濃《志野秋草文水指》桃山~江戸時代 根津美術館
京都市指定文化財《弁慶石町出土資料》桃山~江戸時代 京都市
美濃《黒織部茶碗 銘 松風》桃山~江戸時代 個人蔵
美濃《織部格子文水注》桃山~江戸時代 根津美術館
美濃《織部透文四方筒向付》桃山~江戸時代 三井記念美術館
(左奥から)唐津《耳付水指 銘 紫の庵》桃山~江戸時代 佐賀県立九州陶磁文化館 / 唐津《絵唐津水指》桃山~江戸時代 林原美術館
(左手前)唐津《絵唐津松樹文大皿》桃山~江戸時代 個人蔵 / (右奥)唐津《絵唐津葦文徳利》桃山~江戸時代 根津美術館
「新・桃山の茶陶」と銘打った本展。前回の「桃山の茶陶」展は、平成元年(1989)に開催されました。ネットメディアでは古参を自負するIMも、残念ながら前回展は取材していません。

昭和62(1987)年から翌年にかけ、京都・三条弁慶石町で信楽・備前・志野などの大量の茶陶を発見。通常の町屋敷からの出土品と比べて異常に多く、しかも使われた痕跡が無い事から、きわめて特殊な事例として注目されました。前回の展覧会は、速報的にその成果を紹介したものです。

展覧会を機に三条通の遺跡が注目されるようになると、僅か200メートルにも満たない範囲の中之町や下白山町からも、大量の桃山茶陶が出土。さらに調査を進めると、当時の地図や日記で中之町が「せと物や町」「瀬戸物町」と記されていた事も分かり、この地にやきものを大量に扱う商家があった事が確定的になりました。

今回の展覧会では、約30年の間に進んだ研究の成果が紹介されています。会場には弁慶石町をはじめ、中之町、下白山町、福長町、油屋町、四坊堀川町から出土した茶陶が露出展示で紹介されており、いつもの根津美術館とは少し雰囲気が違います。



展覧会は4章構成ですが、第3章「桃山の茶陶と京都三条瀬戸物屋町」がメインです。桃山の茶陶は慶長年間(1596~1615)の後半頃から器種・生産量とも爆発的に増加。客の要望に応えるかたちで発達したのが、三条瀬戸物屋町の商人たちと考えられています。

見つかった茶陶は、流通段階での選別や、在庫が一括処分されたものと考えられます。ユニークなのが、焼成時に割れた不良品も見つかっている事。わざわざ窯元から運んできた理由は、不良品も売り物にしたから。「洛中洛外図屏風」(福岡市博物館蔵:屏風は未出展ですが、会場で拡大図が示されています)に、瀬戸物屋の店先に割れた徳利が描かれています。さしずめ「ジャンク品」といったところでしょうか。

出土品の中には、現在まで伝わるやきものと、ほぼ同じものもあります。縞やV字の模様がある《織部筒向付》(根津美術館蔵)は中之町の出土品に、三角錐形の《三角耳付花入》(MOA美術館蔵)は、下白山町の出土品に同形のやきものが。詳しく見ていくと、他にもたくさんあるそうです。

展覧会を機に調査や研究が進む事はしばしばありますが、ここまで著しい成果に結び付くのは珍しい事例です。三条瀬戸物屋町から出土していない桃山の茶陶もあるそうで、今後の研究も期待されます。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年10月19日 ]

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ソフィー リチャード (著), 山本 やよい (翻訳)

集英社インターナショナル
¥ 2,376

 
会場
会期
2018年10月20日(土)~12月16日(日)
会期終了
開館時間
10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日
住所
東京都港区南青山6-5-1
電話 03-3400-2536
公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp/
料金
一般 1,300(1,100)円 / 学生 1,000(800)円 / 中学生以下 無料

※( )内は前売券および20名以上の団体料金
※前売券は「禅僧の交流―墨蹟と水墨画を楽しむ」展開催中、根津美術館ミュージアムショップにて販売
展覧会詳細 特別展「新・桃山の茶陶」 詳細情報
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