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レポート
「タータン 伝統と革新のデザイン」展
三鷹市美術ギャラリー | 東京都
タータンは、チェックではありません
ファッションだけでなく、インテリアや雑貨でも良く目にする格子縞の模様、タータン。日本では「タータン・チェック」ですが、まず、その呼び方が間違っています。意外と知られていないタータンの歴史や社会的、文化的背景を紹介する展覧会が、三鷹市美術ギャラリーで開催中です。
会場 左手前は、サマンサ・マッコーチ《キルトスカート》2018年
《アフタヌーンドレス》1865年頃 神戸ファッション美術館
(左から)《少年用ハイランド衣裳一式》1910年頃 神戸ファッション美術館(くろすとしゆき氏寄贈) / 《子ども用ハイランド衣裳一式》1868年頃 神戸ファッション美術館
(左手前から)ヘンリー・マクベス=レイバーン(原画:ジョージ・サンダース)《第5代ゴードン公爵》1929年 / ジョージ・クルックシャンク《ボニー・ウィリー》1822年
「クラン・タータン」の数々
(左手前)ジョイス・ヤング《ウェディングドレス》2018年 / (奥、左から)キンロック・アンダーソン《男性用キルト(正装)一式》2018年 / キンロック・アンダーソン《男性用キルト(準正装)一式》2018年
(左から)アリソン・ハーム《トップ、スカート(ピンク、緑)》2018年 / アリソン・ハーム《トップ、スカート(緑、紫)》2018年
(左奥から)毎日新聞社《サンデー毎日 昭和10年11月17日号》1935年 / 毎日新聞社《サンデー毎日 昭和10年12月1日号》1935年 / 毎日新聞社《サンデー毎日 昭和11年10月11日号》1936年 すべて アドミュージアム東京
アンタ(ANTA)によるタータンの製品
最初に、タータンとチェックの違いについて。タータンは「2色以上の糸をつかい、それらの糸が直角に交わる格子柄である」「たて糸とよこ糸につかう糸の色と数が同じで、基本パターンが繰り返される」が条件です。

一方のチェックは、日本では格子柄全般を指しますが、英語圏では「チェス盤のような市松模様」か「正統なタータンではないもの」のこと。つまり「タータン・チェック」という呼称は、完全に矛盾している事になります。

展覧会は、このような定義も含め、タータンについて幅広く紹介する企画です。神戸ファッション美術館で開幕し、三鷹市美術ギャラリーが2館目、首都圏では唯一の開催となります。

現在のタータンは登録制という事も、あまり知られていないでしょう。2008年に制定された「スコットランド・タータン登録法」により、公的な組織が登録・管理しています。

タータンの起源はケルト人にまでさかのぼります。その後、スコットランドの北西部・ハイランド地方で発展しました。本来は日常着として用いられており、この地方を象徴する存在といえますが、それが仇になり、タータンは受難の歴史を辿る事となります。

英国王位を巡る争いから、ハイランド人が1715年から数度に渡って蜂起(ジャコバイトの反乱)。鎮圧した政府軍は、二度とこのような事が興らないようにと、ハイランド文化そのものの衰退を図りました。1746年に通称「衣類禁止法」が制定され、なんとタータンは使用が禁じられてしまうのです。

ただその間も、ハイランド連隊に属する軍人はタータンが着用できました。諷刺画家ジョン・ケイによる版画にも、タータンを着用した軍人が描かれています。

禁止法は1782年に撤廃。美しく汎用性が高いタータンは、世界中に広まって行く事となります。



目的や用途によって、タータンはいくつかの種類に分けられます。スコットランドの由緒ある氏族(クラン)に由来するクラン・タータン、地域由来のディストリクト・タータン、軍隊用のミリタリー・タータンなど。企業が作成したコーポレート・タータンでは、日本の企業も多くのタータンを登録しています。

現在でもタータンは、とても身近なデザインです。会場にはスコットランドで活躍する6人のデザイナーによるドレスが展示。会場最後には、スコットランドのブランド「アンタ(ANTA)」による、タータン尽くしの製品も並びます。

日本にタータンが入ってきたのは明治以降です。洋装の普及でタータンも広まりますが、顕著になったのは戦後です。

1960年代のアイビー・ファッションのブームで、若い男性に拡大。70年代のアイドル・バンド、ベイ・シティ・ローラーズは、メンバーがそれぞれクラン・タータンを着用し、その人気は「タータン・ハリケーン」と呼ばれました。

80年代中頃には学校制服にタータンを採用する私立学校が増加します。伝統的でありながら、新しいイメージも出す事ができるタータンは、制服にぴったり。その流れは、アイドルのAKBや坂道シリーズの衣裳にも踏襲されていると言えます。

ファッショナブルなドレスが並ぶ、とても華やかな展覧会です。三鷹市美術ギャラリーとしては異色の展覧会ですが、平易な解説で、年代を問わずにお楽しみいただけます。

東京展の後は、岩手、福岡、新潟と巡回します。会場と会期はこちらです。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年12月21日 ]

タータン 伝統と革新のデザインタータン 伝統と革新のデザイン

三鷹市美術ギャラリーほか(著,監修)

青幻舎
¥ 2,500

 
会場
会期
2018年12月8日(土)~2019年2月17日(日)
会期終了
開館時間
10:00~20:00(入館は19:30まで)
※企画展期間以外は変更となる場合があります
休館日
月曜日(12/24、1/14、2/11は開館)、12/25(火)、1/15(火)、2/12(火)、 年末年始(12/29~1/4)
住所
東京都三鷹市下連雀3-35-1 CORAL5F
電話 0422-79-0033
公式サイト http://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20181208/
料金
一般 800円 / 65歳以上・学生(大・高) 500円

※ 中学生以下および障害者手帳をお持ちの方は無料
展覧会詳細 「タータン 伝統と革新のデザイン」展 詳細情報
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