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時代を超えて愛される美人画 ― 大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」
大阪中之島美術館 | 大阪府

上村松園(1875-1949年)は、明治期から昭和期までの約60年にわたる画業において、僅か15歳で頭角を現し、男性で占められていた当時の画壇に風穴を開け、美人画という日本画のジャンルを築いたパイオニアです。松園は幼い頃に父親を亡くして母子家庭で育ち、自身もシングルマザーとして、当時の社会通念では甚だ生きにくい時代を並々ならぬ意思の強さで画業一筋、一家の生計を立てながら多大なる功績を遺しました。

本展は、松園の生誕150年の節目を記念して初期から晩年までの画業をたどり、初公開作品13件を含む100件以上の作品や下絵・素描などを展示する大回顧展です。

大阪中之島美術館のみの開催となりますので、お見逃しなきよう是非お出かけください。


大阪中之島美術館
大阪中之島美術館

大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 上村松園展入口
上村松園展入口


作品は年代順ではなく、4つのテーマ:第1章「人生を描く」、第2章「季節を描く」、第3章「古典を描く」、第4章「暮らしを描く」で構成されています。

(以下、出品作品の作家はすべて上村松園です。)

15歳の時、第3回内国勧業博覧会に出品した《四季美人図》(所在不明)が褒状を受け、また、訪日中の英国王子がその作品を買い上げたことが話題を呼び、その後、注文に応じて同じテーマの作品を何度も手掛けました。年代の異なる4人の女性がそれぞれ春夏秋冬を連想させ、女性の人生に思いを馳せた内容です。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《四季美人図》1892年頃 光ミュージアム【通期展示】
《四季美人図》1892年頃 光ミュージアム【通期展示】


明治初期の頃までは子を産んだ女性は眉を落とし、鉄漿(おはぐろ)をつける習慣がありました。松園の母もそうであったといいます。母を追慕した作品です。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《青眉》1934年 吉野石膏コレクション【前期展示:5/11まで】
《青眉》1934年 吉野石膏コレクション【前期展示:5/11まで】


松園は鋼のメンタルだけれど、モデルの女性達を見つめる眼差しはいつも温かく優しい♡


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《月蝕の宵》1916年 大分県立美術館【5/18まで】
《月蝕の宵》1916年 大分県立美術館【5/18まで】

大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《姉妹之図》1909年頃 公益財団法人 二階堂美術館【通期展示】
《姉妹之図》1909年頃 公益財団法人 二階堂美術館【通期展示】

大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 展示室風景 左《しゃぼん玉》1903年頃 木原文庫【通期展示】
展示室風景 左《しゃぼん玉》1903年頃 木原文庫【通期展示】


小道具として描かれている蛇の目傘が粋な作品。会場では《三美人之図》に描かれている傘を再現したプレミアムな和傘が受注生産にて販売中です。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 左から《花》1910年 姫路市立美術館【前期展示:5/11まで】 / 《三美人之図》1908年 光ミュージアム【通期展示】 / 《花のにぎわい》1907-12年 京都国立近代美術館【前期展示:5/11まで】
左から《花》1910年 姫路市立美術館【前期展示:5/11まで】 / 《三美人之図》1908年 光ミュージアム【通期展示】 / 《花のにぎわい》1907-12年 京都国立近代美術館【前期展示:5/11まで】


このふたりの手元にも蛇の目傘。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 右から《春0さめ》1940年 大分県立美術館【通期展示】 / 《桜可里図》1944年 個人蔵【前期展示:5/11まで】
右から《春さめ》1940年 大分県立美術館【通期展示】 / 《桜可里図》1944年 個人蔵【前期展示:5/11まで】


この作品が発表されたとき、画面中央の柱や後ろ向きの描写に賛否両論あったそうです。

お月様も見えないし…でもよく見ると帯には兎が。魅かれる作品。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《待月》1926年 京都市美術館【前期展示:5/11まで】
《待月》1926年 京都市美術館【前期展示:5/11まで】


穏やかな表情の女性は何思う…女性の上半身を斜め後ろから捉えた構図は珍しい。

メインビジュアルにもなっている人気作品です。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《わか葉》1940年 名都美術館【前期展示:5/11まで】
《わか葉》1940年 名都美術館【前期展示:5/11まで】


本展では、下絵や素描も出品されていますので完成作品と見比べるのも興味深いです。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 左から《むしの音》(下絵) 1907年頃 松伯美術館 / 《若葉》(下絵) 1940年 松伯美術館【いずれも前期展示:5/11まで】
左から《むしの音》(下絵) 1907年頃 松伯美術館 / 《若葉》(下絵) 1940年 松伯美術館【いずれも前期展示:5/11まで】


暮らしの一コマ、市井の風俗をとらえた作品。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《粧》1900年頃【前期展示:5/11まで】
《粧》1900年頃【前期展示:5/11まで】


近年再発見された作品《清少納言》 です。一条天皇の中宮定子に「香炉峰の雪は如何に」と問われた清少納言が、御簾を巻き上げているところが描かれています。

この絵を見たら「光る君へ」で同じ場面があったのを思い出しました。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 左から《清少納言》1917-18年頃【前期展示:5/11まで】 / 《古代美人図》 1918年頃 公益財団法人 二階堂美術館【前期展示】 / 《よし野太夫図》 1910年頃 名都美術館【前期展示:5/11まで】
左から《清少納言》1917-18年頃【前期展示:5/11まで】 / 《古代美人図》 1918年頃 公益財団法人 二階堂美術館【前期展示】 / 《よし野太夫図》 1910年頃 名都美術館【前期展示:5/11まで】


透け感と髪、松園のテクニックに唸ります。御簾の隙間から透けて見える向こう側の描写、

そして巻き上げている御簾は重いのでしょう、髪が少し乱れています。いやぁ、細かい。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《清少納言(部分)》1917-18年頃【前期展示:5/11まで】
《清少納言》(部分) 1917-18年頃【前期展示:5/11まで】


季節感たっぷりの蛍と百合の花。女性の腕と袖の柄が蚊帳から透けて見えます。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《ほたる(部分)》1915年頃 吉野石膏コレクション【前期展示:5/11まで】
《ほたる》(部分) 1915年頃 吉野石膏コレクション【前期展示:5/11まで】


大正時代の松園は、スランプに陥りながらも中国美人を集中して描き、久しぶりに第4回帝展に発表した大作。この作品も透け感半端ない。薄い衣の襞、建具から侍女が透けているし、簾の向こうも透けています。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 《楊貴妃》1922年 松伯美術館【前期展示:5/11まで】
《楊貴妃》1922年 松伯美術館【前期展示:5/11まで】


松園は、女性初の帝国芸術院会員となり、1948年 女性初の文化勲章を受章しました。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 文化勲章
文化勲章


本展の音声ガイドのナビゲーターは俳優・木村多江さん。ご自身も上村松園ファンと仰っていて、お声に作品愛が感じられますよ。


大阪中之島美術館「生誕150年記念 上村松園」会場より 音声ガイド・ナビゲーター 木村多江さん
音声ガイド・ナビゲーター 木村多江さん


[取材・撮影・文:hacoiri / 2025年3月28日]


会場
大阪中之島美術館 4階展示室
会期
2025年3月29日(土)〜6月1日(日) 前期:5月11日まで、後期:5月13日〜6月1日
会期終了
開館時間
10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
休館日
月曜日、5/7(水) *4/28(月)、5/5(月・祝)は開館
住所
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
電話 06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
公式サイト https://art.nikkei.com/shoen/
料金
一般 1,800円、高大生 1,500円、小中生 500円
展覧会詳細 上村松園 詳細情報
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2025年で生誕150周年を迎える日本画家・上村松園。卓越した視点で気品あふれる美人画を描き続けた彼女の足跡は近代日本画の歴史に燦然と輝き、その作品は時代を超えて観る者を魅了し続けています。全国で開催される記念展を通じて、松園が描いた「理想の女性像」とその芸術の真髄に触れてはいかがでしょうか?
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