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レポート
オランダの至宝、フェルメール《真珠の耳飾りの少女》が再来日(レポート)
大阪中之島美術館 | 大阪府
“オランダの至宝”フェルメールの傑作《真珠の耳飾りの少女》が再来日
レンブラント、ヤン・ステーンら17世紀オランダ名画、12作品を展示
ミッフィーとコラボレーションしたぬいぐるみなど、多彩なグッズも

2012年に東京都美術館で開催された「マウリッツハイス美術館展」から14年。大阪にフェルメール《真珠の耳飾りの少女》が奇跡の再来日を果たしました。

展覧会は、所蔵するオランダ「マウリッツハイス美術館」の改修工事による臨時休館に伴って行われるもので、会場は、大阪中之島美術館のみの会場となり、巡回展もありません。

会場では、フェルメールの作品2点のほか、レンブラントやヤン・ステーンなど、マウリッツハイス美術館が所蔵する17世紀オランダ名画、12点が並んでいます。


「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」会場入口
「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」会場入口


17世紀のオランダでは、新教であるプロテスタントが定着したことで、中産階級の台頭や市民団体の存在が独自の歴史画文化を育みました。第1章「歴史画」では、宗教画の小品や集団肖像画など、私邸や市民施設を飾る新たな絵画が求められた背景を紐解きます。

ここでは、レンブラントの師でありアムステルダムを拠点に活躍したラストマンの宗教画《ラザロの復活》に加え、ファン・エーフェルディンヘンが先祖から子どもまでを一堂に描いた、鮮やかで滑らかな筆致の集団肖像画の2点が並んでいます。


第1章は「歴史画」
第1章は「歴史画」


経済的発展を遂げたオランダは、中産市民階級(ブルジョワ)である商人や実業家を中心に人生の節目を祝う肖像画の需要が急増しました。

オランダ17世紀を代表するレンブラントは、肖像画・トローニー(頭部の習作)でも多くの傑作を残しました。《笑う男》は、金箔を貼った銅板の上に描かれた最初期の重要な実験作です。粗い筆致で大胆にとらえられた男の豪快な笑みや目尻のしわには、若き日のレンブラントが模索した絵具の扱い方と、生々しい表情を描き出す卓越した表現力が凝縮されています。


レンブラント・ファン・レイン《笑う男》 1629-1630年頃
レンブラント・ファン・レイン《笑う男》 1629-1630年頃 マウリッツハイス美術館


マウリッツハイス美術館の中でも人気が高いジャンルが、風俗画です。海上貿易や金融システムの刷新によって空前の繁栄を迎えた17世紀オランダでは、裕福な中産階級の台頭により私邸を飾る風俗画の需要が急増しました。酒場の喧騒を描いたヤン・ステーンから、静寂な室内を描いたフェルメールまで多様な日常がとらえられ、多くの作品には道徳的な教訓やメッセージが込められています。

風俗画の代表格と言えるヤン・ステーンの傑作《老いが歌えば若きが笛吹く》は、複数世代の家族が音楽や飲酒、喫煙に興じる姿を描いた一作。放蕩や怠惰の象徴のバグパイプや寓意を含む背景の情景や鳥かごなど、悪習が世代を超えて模倣される愚かしさを、画家自らの姿を交えた卓越したユーモアで表現しています。力強い構図と細部に宿る豊かな表現は、当時から高く評価されていました。


ヤン・ステーン《老いが歌えば若きが笛吹く》 1663–1665年頃
ヤン・ステーン《老いが歌えば若きが笛吹く》 1663–1665年頃 マウリッツハイス美術館


1600年頃に独立したジャンルとして確立した静物画は、17世紀にはオランダで大衆的な人気を誇ります。 頭蓋骨やしおれた花などで現世の虚しさを表す「ヴァニタス」の寓意を込める一方、画家たちは金属やガラスなどの質感を驚くべき緻密さで描き分けます。

近年の美術史研究で関心が高まり、再評価が進んでいる一人が、女性画家のファン・オーステルウェイクです。信仰や現世のはかなさが象徴的に暗示された彼女の作品は、フランス王ルイ14世や神聖ローマ皇帝レオポルト1世など各国の王侯貴族に収集されます。

《装飾的な壺の花》には、神の存在を象徴するヒマワリ、闇に結びつけられるケシ、欲望を表すヴィーナスが組み合わせて描かれ、モチーフからも敬虔なプロテスタントということが分かります。


マリア・ファン・オーステルウェイク《装飾的な壺の花》 1670–1675年頃
マリア・ファン・オーステルウェイク《装飾的な壺の花》 1670–1675年頃 マウリッツハイス美術館


16世紀末の避難民によってもたらされたオランダの風景画は、自然主義的な河川風景やブラジルなどの遠方描写まで専門化・多様化し、後にターナーら英国の画家たちにも多大な影響を与えました。

動物画家として知られるパウルス・ポッテルは、28年という短い生涯の間で約100点に及ぶ作品を残しています。会場には、牧草地で憩う牛たちの姿を、水面に映る反影とともに精緻に表現した《水に映る牛》が展示されています。 日常的にスケッチブックを持ち歩き、丹念な自然観察を基に作品を制作したポッテル。作品の画面中央の枯れ木や、光を浴びる家畜、乳搾りをする女性や水浴びを楽しむ人々、馬車で移動する人物など、当時のオランダの農村生活を細部まで再現しています。


パウルス・ポッテル《水に映る牛》 1648年
パウルス・ポッテル《水に映る牛》 1648年 マウリッツハイス美術館


フェルメールの展示室へと向かう手前で来場者を迎えるのが、全長20mにもおよぶ大型スクリーンの没入型映像体験エリアです。世界中に点在する全作品が実寸大で集結するほか、細部を拡大した高画質映像や「光」を体感する演出を通して画家の生涯をたどり、作品鑑賞への期待感を一層高めてくれます。

《ディアナとニンフたち》は、フェルメールが画家として本格的に歩み始めた21歳頃の貴重な初期作品であり、現存37点の作品の中で唯一の神話画です。三日月をつけたディアナと森の精であるニンフら古代ローマ神話に出てくる5人の女性が、静かに休息するひとときが描かれています。 視線を交わさずうつむき加減の女性たちの姿には、どこか安らぎに満ちた穏やかな雰囲気が漂います。

この作品は、マウリッツハイス美術館に収集された1876年時点では、レンブラントの弟子であるニコラス・マースの作品とされていました。しかし、修復作業中の中でフェルメールが真の作者であることが明らかになりました。


ヨハネス・フェルメール《ディアナとニンフたち》1653–1654年頃
ヨハネス・フェルメール《ディアナとニンフたち》1653–1654年頃 マウリッツハイス美術館


スロープを通り抜けた先に見えるのが、展覧会のハイライトであり、14年ぶりの来日となった《真珠の耳飾りの少女》です。

《真珠の耳飾りの少女》は、1881年のハーグでのオークションで美術収集家デス・トンベによって購入され、彼の死後にマウリッツハイス美術館へと遺贈されました。暗い背景に浮かび上がる少女の顔、青と黄色の東洋的なターバン、そして耳元の大きな真珠が目を引くこの作品は、フェルメールが33歳の頃に描いたとされる、特定の人物ではなくタイプを表現する「トローニー」の一作です。

画中には、顔料と結合材(亜麻仁油)を混ぜ合わせた10種類もの絵具が使われています。ターバンにはラピスラズリから作られる非常に高価なウルトラマリン、唇には昆虫由来の赤色顔料であるコチニールが用いられました。さらに、見る者を引き付ける目のハイライトには、現在では取り扱いが非常に危険だと分かっている鉛白が使用されています。

わずか数筆で描かれた真珠の輝きや少女の繊細な表情には、フェルメールの卓越した光の表現が凝縮されています。


「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」会場
「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」会場


ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃
ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館


フェルメール人気に火がついたのは、1995年にワシントンのナショナル・ギャラリーとマウリッツハイス美術館で開催された回顧展がきっかけでした。その後、小説や映画化などを通して作品の魅力が広まり、今や世界中から愛される存在となっています。

最高傑作《真珠の耳飾りの少女》の来日という貴重な機会にチケットを手に入れて来場できた方は、会場に並ぶ12作品の一筆一筆を心ゆくまでじっくりと味わってみてください。

作品はすべてマウリッツハイス美術館蔵

[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2026年8月20日 ]

内覧会には真珠の耳飾りの少女に扮したミッフィーが登場
ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館
フランス・ハルス《男の肖像》1634年頃 マウリッツハイス美術館
ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム《宝石箱と果物のある豪華な静物》 1650-1655年頃 マウリッツハイス美術館
会場内スロープ
特設ショップも必見
会場
大阪中之島美術館
会期
2026年8月21日(Fr)〜9月27日(Su)
開催中[あと30日]
開館時間
10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
休館日
月曜日休館(祝日の場合は翌平日)
住所
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
電話 06-6479-0550
公式サイト https://vermeer2026.exhibit.jp/
料金
一般 3,000円、高大生 1,500円、小中生 500円
展覧会詳細 フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 詳細情報
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