伊藤若冲っていったいどんな人物だったと思いますか?
この数年でとても多くの若冲作品を目にする機会がありましたが、その都度新しい感動があります。今回は京都嵐山の福田美術館で開催の企画展「若冲にトリハダ!野菜もウリ!」を訪ねました。内覧会の解説は若冲研究に造詣の深い岡田学芸課長です。
まずは若冲絵画の直球ともいえる細密彩色をほどこした鶏主題の最初期作品で《蕪に双鶏図》。 鶏の頭から羽の細部に至るまでの描写や蕪の葉っぱの虫食いなどに唸らされる作品は、展覧会のメインビジュアルを飾っています。

伊藤若冲 《蕪に双鶏図》

内覧会解説は岡田学芸課長
そして初公開となる《老松白鶴図》へと視線を移すと、ごつごつと厚みある樹皮を纏う老松にレースのような白い羽に包まれた鶴がすっくと立っています。新たに収蔵された初公開の作品です。

伊藤若冲 《老松白鶴図》 初公開
今回の展覧会の見どころとしては、初公開や久しぶりの公開、新しく福田美術館のコレクションとなった作品などが多く出展されていることです。浮世絵の時代から新たな表現路線を切り開いた時代の絵師たちの躍動感ある作風は現在私たちの注目を集めて大人気です。
若冲と同時期に京都で活躍した画家たちはとても近くに居を構えていて、並んで歩いていたことも想像すると楽しい会話が聞こえてきそうです。若冲だけでなく円山応挙や長沢芦雪の作品も同時に鑑賞できる嬉しい機会です。
次のギャラリーへ進みましょう。 なんと長~い絵巻物のような作品が目を奪います。2023年にヨーロッパで見つかった《果蔬図巻》は約3m、色とりどりの果物と野菜を描いた巻物です。修復作業を終えてその色彩も更に美しく蘇った姿で鑑賞できます。
そして隣に並ぶのは《果蔬図巻》の1年後に描かれたことがわかっている重要文化財の《菜蟲譜》でこちらは約11m。前半には野菜や果物、後半には昆虫など生き物が描かれています。
これら両作品は描かれた野菜や彩色に共通点が多く見られ、比較しやすいように展示が工夫されています。当時としては珍しいパッションフルーツやトウモロコシなども含まれ、若冲の青物問屋という稼業と観察力が十分発揮されている何だか楽しい気持ちになれる作品です。

伊藤若冲画 梅荘顕常跋《果蔬図巻》

福岡撫山題 伊藤若冲画 細合半斎跋 《菜蟲譜》 (部分)佐野市立吉澤記念美術館所蔵 重要文化財
更にもう一つ長い作品がありました。若冲と相国寺の禅僧・大典が京から大坂へ淀川を舟で下った際に若冲がスケッチし大典が風景を詩作したという共作を、拓版の技法で写し取った《乗興舟》です。文字や線画を白く、山並みなど風景を黒く表した場面が続くので全体的に黒い部分が多いのですが微妙な濃淡があり舟旅のゆっくりした時間の流れが感じられるような気がします。

伊藤若冲下絵 梅荘顕常短辞《乗興舟》(部分)
第3のギャラリーには若冲と共に活躍した円山応挙、長沢芦雪など今や高い人気を誇る絵師たちがそれぞれの技量を生かして自由な表現力を発揮した個性豊かな優品が出展されています。

円山応挙 《群犬図》
今回展示の作品群に登場する生き物たちがとても愛らしく表現されていたので、思わず微笑んでしまう “お顔立ち” に注目してみました。私が選んだゆるかわベストは、《仔犬図》。ちょっと離れ気味の目がいたずらっぽく、好奇心旺盛に遊ぶ様子で可愛くてたまりません。

伊藤若冲 《仔犬図》 ゆるかわベストワン!
そして若冲ならではの構図ベストとして《雲龍図》。掛け軸の上に向かって昇る龍ですが頭の真上方向から描いているので一見なに?と思ってしまいました。

伊藤若冲 《雲龍図》 この方向から描くのですね
多くの若冲作品や初公開など見所満載の企画展は7月まで開催されますが、前期後期での入れ替えや、《果蔬図巻》と《菜蟲譜》が並んでの展示期間が区切られていますのでお好きな絵画の展示期間をよく確認の上、お出かけいただくことをお勧めします。
福田美術館のすぐ裏手の嵯峨嵐山文華館では「それいけ!応挙塾 ―円山応挙とその弟子たちー」と題した企画展も開催中で、こちらでも多くの作品が鑑賞できます。
面白いコラボレーションのミュージアムグッズもあり、嵐山の喧騒を忘れられる場所でエキサイティングな美術鑑賞を是非お楽しみください。

新緑の嵐山に立地する福田美術館

手に入れたいコラボグッズが充実
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2026年4月24日 ]