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レポート
人びとは近代をどう生きたか ─ 歴博「近代」リニューアル(レポート)
歴博「近代」がリニューアル。新しい3つのテーマで近代日本社会史を探求
地図、写真、生活資料、道具など多様な資料で、社会の変化を具体的に紹介
アイヌや沖縄、被差別部落などの視点も取り入れながら多角的に考える展示

近代という時代は、日本の社会構造や人びとの生活を大きく変化させました。

国立歴史民俗博物館は、総合展示第5室「近代」をリニューアル。3つのテーマのもと、多様な資料を通して近代日本を生きた人びとの経験を読み解きます。


国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」リニューアルオープン看板
国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」リニューアルオープン看板


1つめのテーマ「〈国民〉の誕生」では、19世紀半ば以降の世界史的な変動のなかで、日本社会が近代国家へと移行していく過程をたどります。

学校制度や地域に配置された軍隊などを通じ、人びとは「国民」であることを意識するようになりました。明治維新や文明開化、自由民権運動を背景に、新しい思想を学び、自らの権利や社会のあり方を語る動きも広がっていきます。


国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」より 「〈国民〉の誕生」展示風景
「〈国民〉の誕生」展示風景

国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」より 「〈国民〉の誕生」展示風景
「〈国民〉の誕生」展示風景


2つめのテーマ「近代化する人びとのくらしと仕事」では、殖産興業や富国強兵を掲げた明治政府の政策のもとで、生活と労働がどのように変化したかをたどります。

農村から都市への人口移動が進み、教育は青年の自己形成の場となりました。家族のあり方や性差の問題にも目を向けながら、近代社会における生活の変化を描き出します。


国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」より 「近代化する人びとのくらしと仕事」展示風景
「近代化する人びとのくらしと仕事」展示風景

国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」より 「近代化する人びとのくらしと仕事」展示風景
「近代化する人びとのくらしと仕事」展示風景


3つめのテーマ「〈帝国〉日本の社会と人びと」では、日本が台湾や朝鮮、南洋諸島などを支配するなかで形成された帝国社会の姿を扱います。

都市社会の繁栄を支えた食料や労働力、海外へ移動した移民や出稼ぎの生活、新中間層の形成と消費文化の広がりなどに着目し、帝国期の社会構造を読み解きます。


国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」より 「〈帝国〉日本の社会と人びと」展示風景
「〈帝国〉日本の社会と人びと」展示風景

国立歴史民俗博物館 総合展示第5室「近代」より 「〈帝国〉日本の社会と人びと」展示風景
「〈帝国〉日本の社会と人びと」展示風景


展示では、近代社会を別の角度から捉える3つの視点も設けられています。「アイヌにとっての近代」「琉球・沖縄からみた近代」「「水平」をめざして」です。

国家の枠組みだけでは捉えきれない経験を示すことで、近代社会の姿を多面的に考える構成となっています。

「アイヌにとっての近代」では、北海道の開拓政策のもとでアイヌ民族の生活環境が大きく変化した歴史を扱います。千島列島や樺太のアイヌが、国境の変化のなかで移住を強いられた経緯にも触れます。


貝澤徹《UKOUK/輪唱》国立歴史民俗博物館蔵 「アイヌにとっての近代」に展示
貝澤徹《UKOUK/輪唱》国立歴史民俗博物館蔵 「アイヌにとっての近代」に展示


「琉球・沖縄からみた近代」では、琉球処分による日本への編入を大きな転換点として、この地域の社会経験を考えます。出稼ぎや移民の広がり、宮古諸島や八重山諸島の生活にも視野を広げます。

「『水平』をめざして」では、近世の被差別身分に由来する差別が、近代社会においても被差別部落問題として続いた歴史を扱います。差別と排除の実態と、それに抗する運動や活動を取り上げます。


《阿波木偶 三番叟》 国立歴史民俗博物館蔵 「「水平」をめざして」に展示
《阿波木偶 三番叟》 国立歴史民俗博物館蔵 「「水平」をめざして」に展示


また今回のリニューアルでは、第6室「現代」の冒頭にある「戦争と平和」の一部も更新されました。1930年代以降の戦争と、その後の敗戦・占領の経験が社会意識にどのような変化をもたらしたのかを示します。

20世紀の戦争が日本だけでなく他国・他民族にも大きな犠牲をもたらした歴史を見つめ直し、現代社会につながる問いを提示します。


国立歴史民俗博物館 第6室「現代」より 「戦争と平和」展示風景
第6室「現代」 「戦争と平和」展示風景


歴史学・考古学・民俗学を総合的に扱う日本唯一の国立博物館である国立歴史民俗博物館は、日本の歴史と文化への理解を深めることを目的として活動しています。

今回の展示刷新は、国家や制度の変化だけでなく、人びとの経験や地域社会の視点から近代を捉え直す試みといえます。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年3月16日 ]

「近代化する人びとのくらしと仕事」展示風景
「〈帝国〉日本の社会と人びと」展示風景
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