人体の美しさと機械の輝きを融合させた独創的な表現で世界的に知られるアーティスト、空山基。1970年代からロボットをモチーフにした作品を発表し、「セクシーロボット」シリーズをはじめとする作品で、アートとデザイン、テクノロジーを横断する表現を切り開いてきました。
東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開催されている「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」は、空山にとって過去最大規模となる回顧展です。初期のロボット作品から最新の大型絵画、彫刻、映像インスタレーションまでを通して、空山が半世紀にわたり追求してきた「光・透明・反射」の表現世界を体験できます。

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
展示は、初期のロボット表現から現在に至るまでの流れを軸に構成されています。広告作品に端を発するロボット像は、やがて「セクシーロボット」シリーズとして展開し、視覚文化に強い影響を与えてきました。
人体の曲線と金属の質感を同時に成立させる表現は、空山の代名詞といえます。その造形は、アートと商業、現実と虚構の境界を横断しながら発展してきました。

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
会場では、大型キャンバス作品が空間を大きく占めています。金属の表面に映り込む光や周囲の環境が緻密に描き込まれ、平面でありながら立体的な知覚を誘発します。
空山が語る「光を描くために空気を描く」という思想は、こうした作品群において具体化されています。
透明や反射の表現は、単なる質感描写を超え、視覚の認識そのものを問い直す試みでもあります。

空山 基 Untitled ©Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA
立体作品とインスタレーションでは、反射というテーマが空間的に展開されています。鏡面や光源を組み合わせた構成により、像は増殖し、空間そのものが変容していきます。
《Space Traveler》を用いたインスタレーションでは、鏡による無限反射によって像が連続し、時間と空間の感覚が揺らぎます。
鏡面のショーケースに入った《Mirror Maze》では、鑑賞者自身の像や作品が幾重にも重なり合いながら視界を占めます。

空山 基 Space Traveler ©Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
水槽状の空間に配置された《Aquarium》では、サメをモチーフにした彫刻を提示。透明な壁面と内部の照明によって像がゆらぎ、鑑賞者の視線は水中と外部を行き来するように導かれます。
空山が「最もセクシーな魚」と評するサメは、生物であると同時に人工物でもあるような存在として立ち現れます。

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
原画を集めたセクションでは、初期から現在までの制作の軌跡が整理されています。AIBOのデザインや音楽・ファッションとの協働など、領域横断的な活動もあわせて提示されています。
アートと企業、あるいは大衆文化との関係を積極的に引き受けてきた姿勢も、本展の重要な側面です。空山の仕事は、現代における芸術の位置を問い直す契機となっています。

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年

「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年
1階エントランスロビーでは、空山基とソニー・ホンダモビリティが協働した《AFEELA Prototype Tuned by Hajime Sorayama》も展示されています。
車体には空山の美学が反映され、光や反射を生かした表面処理によって、機械でありながら有機的な印象を備えています。

ソニー・ホンダモビリティとコラボレーションした空山基氏の芸術観を施したアート作品としての「AFEELA 1」
光や反射を通じて知覚そのものに関わる問題として捉え直される、空山基の表現。
多様なメディアが交差する空間のなかで、その世界は鑑賞対象を超え、体験として立ち現れます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年3月13日 ]
「SORAYAMA 光・透明・反射 ―TOKYO―」展示風景 CREATIVE MUSEUM TOKYO、2026年