考古学の発掘調査は全国で毎年数多く実施されていますが、その成果が一般公開される機会は決して多くありません。「発掘された日本列島」は、近年の発掘調査で注目を集めた出土資料を通して、日本列島の歴史と文化を紹介する展覧会です。
旧石器時代から近代までの多彩な考古資料に加え、開催地にまつわる地域展も開催。全国各地の最新成果から、日本列島の歴史をたどることができます。

江戸東京博物館「発掘された日本列島2026」会場入口
会場には、近年の発掘調査で注目された成果が数多く並びます。ここでは、印象的な展示をいくつか紹介しましょう。
「我がまちが誇る遺跡」で紹介されているのは「飛騨の遺跡が物語る縄文時代の文化圏」。岐阜県飛騨市の宮川流域で発見された縄文遺跡群を通して、縄文時代中期の文化の広がりを探ります。
出土した土器には北陸系と中部高地系の特徴が共存しており、飛騨が複数の文化圏の接点だったことがわかります。縄文人の交流の広がりを示す興味深い展示です。

「飛騨の遺跡が物語る縄文時代の文化圏」(岐阜県飛騨市)
「新発見考古速報」では、近年の重要発見を時代順に紹介しています。
大阪府東大阪市の西岩田遺跡では、弥生時代終末から古墳時代初頭の洪水堆積層から、多数の木製品が出土しました。
なかでも注目は木製仮面です。この時期のものとしては全国3例目という貴重な発見で、農耕儀礼に使用された可能性があります。赤彩木製品も出土しており、西岩田遺跡が祭祀や儀礼と深く関わる場所だったことを示しています。

古墳時代「西岩田遺跡」(大阪府東大阪市)
山口県の天王森古墳は、6世紀前半に築かれた前方後円墳です。調査では、造り出し周辺から多数の形象埴輪が極めて良好な状態で出土しました。
家形や人物、猪、大刀、盾など多彩な埴輪が確認され、その製作技法には継体大王墓とされる今城塚古墳出土埴輪との共通点も見られます。王権中枢との強い結び付きや、当時の政治・軍事体制を考えるうえでも重要な成果となりました。

古墳時代「天王森古墳」(山口県下松市)
奈良県奈良市の登大路瓦窯跡では、興福寺に瓦を供給した窯跡が発見されました。本格的な発掘調査によって、奈良時代後半から平安時代にかけて築かれた12基の瓦窯の存在が明らかになっています。
興福寺は度重なる火災によって伽藍を失いながらも再建を繰り返してきました。長期間操業した瓦窯の存在は、その復興を支えた生産体制を物語っています。

古代「史跡興福寺旧境内 登大路瓦窯跡」(奈良市)
岩手県一関市の骨寺村荘園遺跡は、中尊寺の荘園として栄えた中世の景観を今に伝える遺跡です。鎌倉時代の絵図に描かれた寺社や地形が現在も残り、中世の村の姿を具体的に知ることができます。
周辺では継続的な発掘調査が進められており、奥州藤原氏と中尊寺を支えた荘園の実態解明が期待されています。

中世「史跡骨寺村荘園遺跡」(岩手県一関市)
名古屋市の西二葉町遺跡では、犬山城主・成瀬家の中屋敷跡が調査されました。地下室や庭園跡などが確認され、江戸時代の大名屋敷の姿が浮かび上がっています。
さらに近代以降は学校用地として利用されていたことも判明しました。江戸から近代へと続く土地利用の変遷をたどることができる興味深い成果です。

近世・近代「西二葉町遺跡」(名古屋市)
地域展では、文京区原町西遺跡から見つかった瘡守稲荷信仰を紹介しています。瘡守稲荷は皮膚病平癒の利益で知られ、江戸時代には多くの人々の信仰を集めました。
発掘調査では数千枚に及ぶかわらけや大量の土玉が出土。文献で知られていた信仰の実態を、考古資料によって裏付ける貴重な成果です。

地域展「掘り出された祈り ─ 瘡守稲荷信仰のかたち ─ 」(東京都)
全国各地で続けられている発掘調査の成果を、一堂に見ることができる本展。旧石器時代から近代まで、日本列島の新たな歴史像に触れることができる展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年6月12日 ]