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35年ぶりの回顧展 ─ 三重県立美術館「生誕150周年 アルベール・マルケ展」(読者レポート)
三重県立美術館 | 三重県

アルベール・マルケの展覧会が、三重県立美術館で開催中です。生誕150周年を迎えたアルベール・マルケは、20世紀フランス絵画の巨匠であり、フォーヴィスム(野獣派)の代表的な作家です。本展では、初期作から最晩年までの約100点の作品が展示され、国内では35年ぶりとなる大規模な回顧展となります。(会期中展示替えあり)


美術館入口
美術館入口


会場には、パリの街並み、セーヌ河の光景、旅先の地中海の港や浜辺の風景を、微妙な色合いで描いた作品が並びます。その穏やかな作品を見ていると、フォーヴィスム(野獣派)の画家というイメージにとどまらない、アルベール・マルケの魅力を再発見することができます。

1.フォーヴィスムの渦中で 

展示の冒頭に置かれた≪自画像≫を見ると、口ひげを生やし、眼鏡をかけた温和そうな男性が描かれています。額の横の影の部分には、緑っぽい色が使われています。また、筆使いもムラを気にしない大まかな印象です。その隣の≪裸婦、通称フォーヴの裸婦≫でも、赤や緑が多用され、筆使いも荒々しいです。フォーヴィスム(野獣派)の画家らしい、原色と激しい筆使いを見て取ることができます。


左から、≪裸婦、通称フォーヴの裸婦≫ 1898 ボルドー美術館、≪自画像≫ 1904 ボルドー美術館
左から、≪裸婦、通称フォーヴの裸婦≫ 1898 ボルドー美術館、≪自画像≫ 1904 ボルドー美術館


2.水辺の変奏:旅する画家 

多くの作品に、よく似たシルエットの建物が登場します。アルベール・マルケは、ゴシック建築の代表作と言われるノートル=ダム大聖堂を繰り返し描いています。それらの作品を見比べると、空の色合いの違いから、その日の天気や時間帯の違いを推測できます。

また、川の水位の違いから、大雨が降った後と思われる作品もあります。聞いたところでは、鑑賞者が作品を見比べやすいように、並び順を工夫しているそうです。


左から、≪ノートル=ダム大聖堂、あるいはサン=ミシェル橋の冬≫1908-1909 パリ、個人蔵(協力:パリ、ギャルリー・ド・ラ・プレジダンス)、≪サン=ミシェル河岸からノートル=ダム大聖堂を望む≫ なかた美術館
左から、≪ノートル=ダム大聖堂、あるいはサン=ミシェル橋の冬≫1908-1909 パリ、プロシュ・コレクション(協力:パリ、ギャルリー・ド・ラ・プレジダンス)、≪サン=ミシェル河岸からノートル=ダム大聖堂を望む≫ なかた美術館


少し進むと、砂浜のある海岸を描いた作品が続きます。パリの街中の作品に比べると、ずいぶんと色合いが明るいです。≪ル・ピラ≫と≪ル・ピラの浜辺(アルカション湾の帆船)≫は、同じ海岸を描いていますが、海の色合いが異なります。また、海面の波の立ち方も、微妙な筆使いで描き分けられています。≪ル・ピラ≫には、ボートを漕ぐ人物が小さく描かれています。海水浴に来ている人々なのでしょう。確かに、こちらの海の波は穏やかで、泳ぎやすそうです。


美術館入口左から、≪ル・ピラ≫ 1935 ボルドー美術館、≪ル・ピラの浜辺(アルカション湾の帆船)≫ 1935 パリ、個人蔵、≪レ・サーブル・ドロンヌ≫ 1921 国立西洋美術館、松方コレクション
左から、≪ル・ピラ≫ 1935 ボルドー美術館、≪ル・ピラの浜辺(アルカション湾の帆船)≫ 1935 パリ、個人蔵(協力:パリ、ギャラリー・ド・ラ・プレジダンス)、≪レ・サーブル・ドロンヌ≫ 1921 国立西洋美術館、松方コレクション


3.アルジェに恋して 

≪アルジェ港≫は、小さな作品ですが、奥行き感があります。その秘密は、鑑賞者の目線を誘導する、たくみな画面構成にあるそうです。画面右下の小舟を見た鑑賞者の目線は、喫水線に沿い左側に進みます。左端には2本の煙突のある大きな客船があり、その喫水線と海岸の家並みを右端にたどります。

右端からは屋根伝いに左端まで進み、そこから山の尾根を右上にたどると、頂上の白っぽい塔にたどり着きます。目線が左右を往復することで、画面サイズ以上に奥行きを感じる仕掛けになっているようです。説明を聞いて、とても納得しました。


≪アルジェ港≫ 1922頃、パリ、個人蔵
≪アルジェ港≫ 1922頃、パリ(協力:パリ、ギャラリー・ド・ラ・プレジダンス)、個人蔵


4.晩年:セーヌ、ポン=ヌフ連作 

ポン=ヌフの連作が並んでいます。夜景のポン=ヌフも出ています。その他に、アパートの上階から眺めた冬のパリの街並みが並んでいます。≪雪のコンティ河岸≫、≪雪と緑色の空、パリ(ポン=ヌフ)[冬のパリ(ポン・ヌフ)]≫は、どちらも最晩年の作品です。

フォーヴィスム(野獣派)の画家の展覧会という画一的な印象には収まらない、とても穏やかな印象の展覧会です。


左から、≪雪と緑色の空、パリ(ポン=ヌフ)[冬のパリ(ポン・ヌフ)]≫ 1947 上原美術館、≪雪のコンティ河岸≫ 1947 ボルドー美術館
左から、≪雪と緑色の空、パリ(ポン=ヌフ)[冬のパリ(ポン・ヌフ)]≫ 1947 上原美術館、≪雪のコンティ河岸≫ 1947 ボルドー美術館


5.素描・挿絵本 

素描の展示で、気になる額装がありました。といっても、1点ずつ額装するか、まとめて額装するかの違いなのですが、実際に並べてみると、所有者の性格の違いのようなものを感じられて、おもしろいと思いました。


展示風景
展示風景 展示期間:2026年8月8日~8月23日


会期は9月13日までです。見逃さないように早めの訪問をおすすめします。

なお、掲載した写真は許可を得て撮影しています。

[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2026年8月11日 ]


会場
三重県立美術館
会期
2026年8月8日(Sa)〜9月13日(Su)
会期終了
開館時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日
住所
〒514-0007 三重県津市大谷町11
電話 059-227-2100
料金
一般:1,200円/学生:1,000円/高校生以下無料
展覧会詳細 アルベール・マルケ展 詳細情報
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