1951年に「マリのドレス」を意味する名で創業した、フィンランドを代表するデザインハウス「マリメッコ」。 目に留まる鮮やかな色彩と大胆な模様は、世代や国境を超えて人気を誇っています。
ファッションだけでなくインテリアやテーブルウェア、日常の小物まで展開され、創業から現在までのプリント・デザインは3,500種類以上に及びます。そんなマリメッコのモノづくりの真髄に迫る「マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking ―Beauty, Dream, Love」が、東京都庭園美術館ではじまりました。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館1階 大食堂
会場では、アール・デコ装飾を基調とした旧朝香宮邸と新館での2つの空間を用いて、マリメッコの創造の美学をひもといていきます。
入口最初に目にするのは、多様なプリント模様が一堂に会する展示です。
展示です。創業者のアルミ・ラティアは「生活に美しさを取り入れたい」というの思いから生まれたマリメッコのデザインは、ビビットで大胆なデザインが特徴ですが、トレンドに左右されず長く使えるプロダクトです。
赤、青、緑色の配色が際立つ《ミュリュスキュリュフテュ》は、ヤング・カルチャーの影響からできたもの。フェミニンなシルエットながら装飾的な図案を採用した、遊び心と落ち着きを兼ね備えたドレスです。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館1階 大広間
マリメッコといえば花を使ったデザインを思い浮かべる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
当初テキスタイルデザインに花柄を取り入れることに対して否定的だったアルミ・ラティアですが、あえて写実的な花を表現するのではなく、抽象化することで自然のエネルギーとスケールを伝える図案をつくり出ししたのが「ウニッコ」です。フィンランド語では「ケシの花」を指す「ウニッコ」ですが、実在のケシの花に捉われないデザインです。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場よりウニッコ 本館1階 大客室
カーテンやソファ、壁などのインテリアからはじまった「ウニッコ」は、 2000年頃には衣服にもとり入れらるようになります。 「ウニッコ」のシリーズの中でも「マリデニム」は、水を使わず熱で描くレーザーマーキング技術でつくられ、オーガニックコットン80%、リサイクルコットン20%使用した環境への配慮もされたデニムです。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場よりウニッコ< 本館1階 大広間/p>
美術館の建築とのコラボレーションも楽しむことができる今回の展覧会。2階へ上がる踊り場には、大きなテキスタイルが吊るされています。 天井から下へ流れるようなデザインのテキスタイルは、井戸から水を汲む際にバケツを落とした水面に波紋が広がる様子から着想を得たため「カイヴォ(泉)」と名前がつけられています。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館 第一階段
階段を上がった先にも展示されているのは、手描きの線でひかれた鮮やかな色合いの「ライデ(線路)」です。ストライプは、マリメッコの図案制作において欠かせない要素です。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館2階 広間
マリメッコと日本との関係も紹介します。1968年、24歳だった脇阪克ニは、フィンランド人以外で初めてのマリメッコのデザイナーとなりました。また、1974年に入社した石本藤雄は、32年にわたって在籍し、地元の自然からインスピレーションを得たものなど約400点のデザインを手がけ、マリメッコ史上最も多作なデザイナーとしても知られています。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館2階 合の間
マリメッコのドレスは、マキシドレスやAライン、ミニドレスをはじめ、そのすべてに共通して動きやすく快適である点が大きな魅力です。中でも建築的なデザインのマキシドレスは、ストンと落ちるシルエットで、ドレスをカンヴァスに見立てるという考え方を最もよく体現しています。一方のミニドレス「マリミニ」は、新たな自由を象徴する衣服で、1960年代初頭にはジャクリーン・ケネディが着用して雑誌の表紙に登場。一夜にしてマリメッコの名を世界中に知らしめましたと言えるドレスとなりました。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館2階 殿下居間
ミナペルホネンの創設者・皆川明がマリメッコとの対話を重ね、独自の視点で「マリメッコ」を再解釈した新作インスタレーションも展示されています。マリメッコ独自のアイデンティティを映し出しつつ、「クリエイティブな共同体」という精神を体現した作品です。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 本館2階 北の間 皆川明《marimekko's Timeless World》展示風景
創業時から現在にいたるまで、デザイナーやアーティスト、服飾デザイナー、プリント制作の職人らが協働し数多くの作品を生み出しているマリメッコ。現在のプリントはすべて機械を使用していますが、すべての行程で職人の手と眼を通して行われているため、デザイナー名、プリント名、デザイン年が記されています。
新館では、 映像やデザイン画、実際にファクトリーで使用されている道具などを通じて、作り手の創造性を可視化します。 また、アートユニット・plaplaxによるダイナミックな展示空間も。マリメッコが掲げている6つの普遍的なテーマ、「建築」「風景」「植物」「花柄」「ストーリーテリング」「装飾」のカテゴリーを紹介したインスタレーションも展開されています。

東京都庭園美術館「マリメッコ展 模様のちから」会場 新館ギャラリー1 plapax《Factory as a Playground》展示風景
インテリアファブリックから身に着けるドレスまで、暮らしの中に前向きな活力と彩りを与えてくれるマリメッコのデザイン。 アール・デコ様式の美しい建築空間と北欧デザインの華やかな共演を、ぜひ会場で体感してみてはいかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2026年10月2日 ]