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レポート
石田智子展
郡山市立美術館 | 福島県
15万本の紙撚(こより)
遠くから見ると、ぼんやりとした巨大な白い造形。なんとこれらは、膨大な数の紙撚(こより)を組み合わせて作ったものです。国内外の展覧会で高く評価されている石田智子(1958-)の壮大な世界が広がる展覧会が、郡山市立美術館で開催中です。
石田智子《揺籃》
石田智子《むすんでひらいて》
石田智子《むすんでひらいて》(部分)
石田智子《むすんでひらいて》
石田智子《むすんでひらいて》(部分)
石田智子《揺籃》(部分)
石田智子《揺籃》
《重重無尽シリーズⅡ》(部分)
会場にて、石田智子さん

企画展示室に入ると、圧巻のインスタレーションが始まります。大きく上部に広がった作品をはじめ、半球を伏せたような作品(2点)、奥には背の高い作品。4つの白い塊が、響き合うように並びます。


「塊」と書きましたが、作品はメッシュ状に透けており、軽やかなイメージです。照明に近い上部が目立つので、床面から浮いているようにも感じます。


石田智子さんは大阪生まれ。京都精華大学美術学部染織科を卒業し、当初は布を使って作品を制作していました。


1991年に嫁いだ先が、郡山市に隣接する三春町の福聚寺 。芥川賞作家で僧侶の玄侑宗久氏が住職を務める、臨済宗妙心寺派の古刹です。


「寺の生活」というと、ゆったりした時間が流れるようにも思えますが、実際は真逆です。家事や作務など日常の仕事に追われる毎日で、じっくりと作品を作る時間は皆無。また、広々としたお堂はあっても、制作ためののスペースは殆どありません。


そんな中で石田さんが辿り着いたのが、紙撚を使った作品でした。参拝者が持参するお供え物の包装紙から、人々の想いを作品に込めることが出来るのでは、と考えたのです。


短冊状に切った紙を水に浸して、捻って紙撚に。これなら小さなスペースで作業できますし、作業の途中でも中断できるため、日常の生活と共存できます。


そうして作り溜めた紙撚を、今回の展覧会では15万本も使いました。会場にあわせた構成で、独自の世界が広がります。



今回の会場では、展示室の壁面に展示ケースがありましたが、石田さんはあえてこのケースを隠さずに、作品を設置。美術館の展示ケースは映り込みが少ない特殊なガラスを使っているため、作品や鑑賞者がほどよく映り、広がりがある世界が生まれました。


インタビューにもあるように、注目して欲しいのが、床への映り込みと影。床を見ながら作品に近寄ると、床面に映っていた作品が見えなくなり、影だけが目に入るように。計算された、照明の絶妙な効果です。


隣のゾーンに進むと、一変して別の世界に。横に広がる波のようなフォルムで、大きな作品が1点だけ佇みます。


感じ方が異なるのは、照明の違いもあります。前の部屋のハロゲンが暖かな印象だったのに対し、ここでは色温度が高い寒色系のLED照明を使いました。波打つ板状のフォルムの中央部分を暗めにし、外周の縁が際立つように。離れた場所にベンチがあるので、ぜひ座って鑑賞いただければと思います。


企画展示室の最後と、展示室前のホールにも作品があり、こちらは、シュレッダーにかけられた紙、印刷のミスプリント紙、輪切りにした紙管などを利用。震災後に三春町に避難してきた葛尾村の女性たちや、地域の小中学生など、多くの人たちと一緒に作った作品もあります。


展覧会は撮影自由。来館者は近寄ったり離れたり、さらに上から、かがんでと、思い思いにシャッターを切っていました。


県庁所在地ではない都市の美術館としては、特筆すべきミュージアムのひとつである郡山市立美術館。設計は東京都現代美術館などで知られる柳澤孝彦で、公共建築百選に選ばれている美しい建物も魅力的です。


東京から郡山まで、新幹線なら1時間半弱。首都圏の美術ファンにも強くおすすめしたい展覧会です。


[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年3月8日 ]


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エス・シー・シー(著 編集)

エス・シー・シー
¥ 840

会場
会期
2020年3月1日(日)~4月19日(日)
会期終了
開館時間
9:30~17:00(入館16:30まで)
休館日
毎週月曜日
住所
福島県郡山市安原町大谷地130-2
電話 024-956-2200
公式サイト https://www.city.koriyama.lg.jp/bijutsukan/index.html
料金
一般:500(400)円 / 高大学生・65歳以上:300(240)円
( )内は20名以上の団体料金
中学生以下、障がい者手帳お持ちの方は無料
展覧会詳細 石田智子展 詳細情報
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