2003年4月に開館した
パナソニック 汐留ミュージアム、今年で11年目に入りました。館内の「ルオー・ギャラリー」はルオーの名を冠した世界唯一の美術館です。
第一部「色の謎」20世紀フランスを代表する画家のひとり、ジョルジュ・ルオー。ギュスターヴ・モローに師事し、モロー美術館の初代館長も務めています。道化師や娼婦を題材とした作品から、後年は宗教的な主題を多く描きました。
1997年に日本で開かれたルオーの展覧会に、旧松下電工会長の三好俊夫氏が訪れたのが作品収集のきっかけです。作品の精神性に感銘を受けた三好氏は、20点の収蔵を決定。その後もルオー作品の収集を進め、現在では初期から晩年まで、230点余を網羅するコレクションになりました。
第二部「形の謎」今回の展覧会は、収蔵するルオー作品を一挙に公開する企画。「作品が抱えるさまざまな謎や秘密を紹介する」という、ミステリー仕立ての構成になっています。
扉を開けると「名画の謎」の解説が「色・形・ハーモニー」が制作の最も重要なポイントとしていたルオー。本展でも「色」「形」「ハーモニー」を謎解きのキーワードとして設定しています。
活動の初期に青にこだわったのは? 長い腕、丸い腹部…このプロポーションの理由は? キリストと道化師の同一性? ルオー作品を鑑賞する上で欠かせないポイントが、エピソードも含めて紹介されています。
絵の裏側に回ることができる場所も本展は、演出面の工夫が多いのも特徴的です。
「謎」がテーマなので、壁や床には足跡や手形のグラフィック。扉に隠された名画の謎、福笑い風の展示や、透明な板を重ねてできる版画の解説など、各所にさまざまの工夫がしてあります。小学校高学年くらいからなら、十分楽しめそうな展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年4月6日 ]