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    レポート
    葛飾応為「吉原格子先之図」 ─ 光と影の美
    太田記念美術館 | 東京都
    画狂老人の娘、知られざるその実力
    天才絵師・葛飾北斎の三女、葛飾応為(おうい)。美人画においては北斎をしのぐ力量があったといわれながら、現存する作品はわずかに10点程度しか確認されていない応為の代表作《吉原格子先之図》が、太田記念美術館で展示中です。
    葛飾応為《吉原格子先之図》
    高井蘭山著・葛飾応為画《女重宝記》
    (左から)作者不詳《室内遊興図》 / 作者不詳《仲ノ町風景》 / 宮川長亀《吉原格子先の図》
    (左から)昇亭北寿《上総九十九里地引網大漁猟正写之図》 / 昇亭北寿《東都両国の風景》
    (右から)月岡芳年《風俗三十二相 つめたそう 文化年間めかけの風俗》 / 四代歌川豊国《十二時秘図試歳丸 亥の刻厄除の川崎帰》
    (左から)喜多川歌麿《中田屋》 / 菊川英山《当風三美人》
    (左から)歌川芳幾《新寫月花乃姿繪 四代目市村家橘の口上/四代目中村芝翫》 / 豊原国周《楽屋二階影評判 松王嵐璃寛》
    (右から)歌川国貞(三代歌川豊国)《二見浦曙の図》 / 歌川国貞(三代歌川豊国)《豊国揮毫奇術競 蒙雲国師》
    (右)小林清親《今戸橋茶亭の月夜》
    吉原遊郭の妓楼・和泉屋を舞台に、暗闇の中に浮かび上がる遊女と客を描いた肉筆浮世絵《吉原格子先之図》。大胆な陰影を用いた幻想的な光景は、一般的な浮世絵のイメージとは大きく異なります。

    主役である中央の遊女は黒いシルエットで描かれていますが、手前に提灯があるので、本来は顔が見えるはず。他の陰影は正確なので、あえて影で表現していることが分かります。

    室内の遊女は格子が邪魔をして、顔は見え隠れするのみ。はっきりと顔が見える右上の遊女は、鼻にもきちんと立体感が表現されています。

    応為の作品には署名が無いものも多いのですが、こちらは署名がはっきりしています。提灯に絵師としての名前「應」「為」と、本名である「栄」が記されています。


    葛飾応為《吉原格子先之図》

    北斎の末娘だった応為。生まれは1801年頃、没したのは1866年頃と推定されますが、詳しいことは分かっていません。絵師の南沢等明(みなみざわとうめい)に嫁ぎますが、後に離縁。自分より拙い等明の絵を笑ったと伝えられるので、あるいはその男勝りの性格が離婚の理由かもしれません。

    出戻った後には、父の北斎と同居します。北斎はズボラな一面がありゴミ屋敷に住んでいたと言われますが、応為も小さなことにこだわらない豪胆な性格。二人は気があったのか、北斎を「おーい」と呼んでいたのが、画号の「応為」になったという説もあります。対する北斎は、顎が出ていた応為のことを「アゴ」と呼んでいました。

    女子力には疑問が残る応為ですが、絵師としての実力は、北斎が「余の美人画は、阿栄におよばざるなり」と語ったほど。同時代の美人画の名手、渓斎英泉(けいさいえいせん)も応為のずば抜けた力量を評価する言葉を残しています。

    残念ながら、応為の遺作は数えるほどしか確認されていません。晩年の北斎を助けていたため、北斎80代の作品は応為の代筆が含まれているとも言われています。


    応為の名前が記された数少ない版本のひとつ、高井蘭山著/葛飾応為画《女重宝記》。署名に「かつしか應為酔女筆」とあり、酒好きだったことが分かります(北斎は飲みませんでした)

    光と影の表現が特徴的な《吉原格子先之図》にあわせ、会場では北斎一門による陰影表現や洋風表現の作品、また、江戸時代後期に活躍した国芳・広重・国貞、明治時代の小林清親なども紹介されています。さまざまな浮世絵師による光と影の捉え方をご覧ください。


    会場風景

    実は、2014年は葛飾応為のあたり年。東京展の展示は終わってしまいましたが「大浮世絵展」では《夜桜美人図》が展示され、名古屋・神戸・北九州・上野と巡回する「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」では《三曲合奏図》と、本展をあわせて応為の代表作が三点も見ることができるのです。

    《吉原格子先之図》はあまり大きくない作品(26.3cm×39.8cm)のため、細部はウェブでは分かりにくいかもしれません。ぜひ会場でご確認ください。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月31日 ]

    江戸通になる本

    秋山 忠彌 (著)

    新人物往来社
    ¥ 700

     
    会場
    会期
    2014年2月1日(土)~2月26日(水)
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日休館
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H2602-katsushikaoi.html
    料金
    一般 700円/大高生 500円/中学生以下無料
    展覧会詳細 葛飾応為「吉原格子先之図」 ─ 光と影の美 詳細情報
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