展覧会は、まず今年度寄贈された作品から。《山水図 縮図》は狩野派の作品で、室町時代の水墨山水図を模写したもの。《探幽原画 倣古名画巻模本》も狩野派によるもので、狩野探幽が描いた手本を写した作品です。
《探幽縮図 東大寺大仏縁起絵巻》は、狩野探幽が「東大寺大仏縁起絵巻」写したもので、自分が描く際の参考にしていたと考えられます。小さな絵巻ですが、長さは約11メートル。ケースでは大仏が完成した時の場面の展示ですが、別室のパネルで全容が解説されています。
順に狩野派《山水図 縮図》、狩野派《探幽原画 倣古名画巻模本》、狩野探幽《探幽縮図 東大寺大仏縁起絵巻》17~18世紀に人気があった英一蝶(はなぶさいっちょう)。狩野探幽の弟・安信に学びますが後に破門され、流罪にもなった事もあります。
英一蝶の真骨頂といえるのが、ユニークな作品。《一休和尚酔臥図》は酒屋の店先で酔いつぶれた一休さんを描いたもの。《不動図》は神妙な顔で滝行に励む不動明王ですが、剣と羂索と炎が、濡れないように脇に置かれています(お不動さまは背中に炎、が定番です)。
順に英一蝶《一休和尚酔臥図》、英一蝶《不動図》隣の展示室では、伝統的な画材を使いながら西洋風の構図と陰影を取り入れた秋田蘭画も、寄託作品の歸空庵コレクションから紹介されています。
西洋の絵を題材にしたと思われる伝 小田野直武《新蕨飛虻図》は、ルドンを思わせる不気味さ。太田洞玉《蝦蟇仙人図》は仙人や水辺が秋田蘭画風に表現されているものの、遠景の山の描写は概念的です。
どことなく'落ち着きが悪く'思えるのが、秋田蘭画の不思議な魅力といえるでしょうか。
順に伝 小田野直武《新蕨飛虻図》歸空庵コレクション、太田洞玉《蝦蟇仙人図》歸空庵コレクション逆に最後の「狩野派と肉筆浮世絵」は、'落ち着きが良い'江戸絵画の本流。同じような時期の作品ですが、ここまで表現に差があります。
展示室の最奥で最も目立つのは、狩野典信《唐子遊図屏風》。遊びに夢中になっている中国の子ども「唐子(からこ)」を描いた屏風で、衣裳の細部まで丹念に描かれています。
最後にご紹介するのは、超絶技巧の仏画。加藤信清《五百羅漢図》は、一見すると色が薄い作品のようにも見えますが、なんと人物や樹木、雲など、全てをお経の漢字で描いています。この手法で五十幅の五百羅漢図を制作し、龍興寺に寄進しています。
順に狩野典信《唐子遊図屏風》、加藤信清《五百羅漢図》かなりの充実度ですがコレクション展ということもあって、なんと観覧無料。さらに、館内の撮影もOK(三脚・フラッシュは不可)と、びっくりするような大サービス展です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年3月5日 ]