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    レポート
    日本の妖美 橘小夢展
    弥生美術館 | 東京都
    秋田で発見、妖しい美人
    大正~昭和初年代を中心に、日本画・版画・挿絵などの分野で活躍した橘小夢(たちばなさゆめ:1892~1970)。妖美に満ちた女性を描かせたら天下一品、新発見作品が21点も並ぶ展覧会が、弥生美術館で開催中です。
    (左から)《日本武尊》 / 《日本武尊》 / 《花魁》
    (左から)《玉藻前》 / 《玉藻前》 / 《玉藻前》
    (左から)《唐人お吉》 / 《唐人お吉》 / 《八百屋お吉》 / 《お蝶夫人》 / 《お蝶夫人》 / 《愛欲を生じて 吉祥天女の像に恋ひ 感応して 奇しき表を示し縁》
    (左から)《安珍と清姫》 / 《嫉妬》 / 《嫉妬》
    (左から)《(仮題)火桶》 / 《若菜姫》 / 《(仮題)艶笑》
    (左から)《秋晴れ》 / 《梅雨晴れ》
    《牡丹燈籠画譜》
    (左から)《花車》 / 《地獄太夫》
    会場
    病弱で制作からたびたび遠ざかり、画壇とも距離を置いていた橘小夢。長い間「幻の画家」とされていましたが、弥生美術館で22年前(1993年)に展覧会を開催したところ、その「妖しく美しい」女性像が評判に。近年は展覧会で取り上げられる機会も増えてきました。

    今回は久しぶりの大回顧展、新たに見つかった作品を含め、約200点を紹介しています。


    1階展示室

    橘小夢は秋田生まれ。川端画学校で日本画を学び、当初は挿絵や版画で活躍しました。

    「どんな人間でも、自己の国土や郷里を愛さない者はいないだろう。それと同じやうに其国土の伝説や俚謡(りよう:民謡と同義)に耳を傾けない者はいないだろう」と話し、日本の伝説を愛した小夢。その嗜好は創作にも現れ、会場には玉藻前(たまものまえ)、八百屋お七、唐人お吉、お蝶夫人などの作品が並びます。

    河童がしがみつく女性が水の底に沈んでいく《水魔》は、昭和7年に発禁処分を受けた作品。直接的に風紀を乱す作風とは思えませんが、耽美の色が濃い小夢の作品は、軍靴の音が大きくなる時代には受け入れ難いものでした。


    動画最後が、発禁処分を受けた《水魔》

    初めての画集の出版が計画されていた矢先に、関東大震災に見舞われた小夢。自身は難を逃れたものの、原画を預けていた出版社が焼失し、多くの作品が失われていました。

    そのため、この時期の小夢の主要作品は数が多くありませんが、本展を機に弥生美術館の中村圭子学芸員が小夢の故郷である秋田県を調査。愛好家の遺族宅などから多くの作品を発見し、うち21点が本展で紹介されています。

    《花魁》も今回の調査で見つかった作品。関東大震災の8ケ月前に描かれたものなので、幸いにも秋田にあったため難を逃れました。

    色っぽい仕草で盃を持つ花魁、着物の模様は胡粉の盛り上がりもはっきりと残り、鮮やかな色彩が目をひきます。


    発見された《花魁》は、非常に美しい作品

    昭和20年代の装幀の仕事の後、画家としての活動から遠ざかっていた小夢。昭和30年代に入ると、子どもたちに形見としての作品を残そうと、再び絵筆を取りました。

    会場最後の屏風絵《地獄太夫》は、昭和35年頃の作品。小夢の地獄太夫は、衣装の凄惨な地獄絵とは対照的に、得意の美人は涼やかな顔つきです。


    《地獄太夫》は、晩年の作品

    耽美的な作風の画家は創作期間が短い事が多いのですが、小夢は病気による中断はあったものの、例外的に長く創作を続けました。新発見作品も掲載されている展覧会図録は、一般書籍として発売中です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年4月8日 ]

    橘小夢画集: 日本の妖美橘小夢画集: 日本の妖美

    加藤 千鶴 (監修), 中村 圭子 (編集), 加藤 宏明

    河出書房新社
    ¥ 3,996


    橘小夢: 幻の画家 謎の生涯を解く橘小夢: 幻の画家 謎の生涯を解く

    加藤 宏明 (監修), 中村 圭子 (編集)

    河出書房新社
    ¥ 1,944

     
    会場
    会期
    2015年4月3日(金)~6月28日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分までにお願いします)
    休館日
    月曜日  ただしゴールデンウィーク期間を含む4/21(火)~5/10(日)は無休で開館。
    住所
    東京都文京区弥生2-4-3
    電話 03-3812-0012
    公式サイト http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/outline.html
    料金
    一般900円/大・高生800円/中・小生400円
    (竹久夢二美術館もご覧いただけます)
    展覧会詳細 日本の妖美 橘小夢展 詳細情報
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