タイトルが示すように、展覧会は琳派を「イメージ」できる作品を紹介するもの。作家が「これは琳派です」と宣言しているわけではありません。
ただ、そもそも琳派は私淑によって成り立っているため、定義づけは困難です。琳派の先達に感化されたものは、即ち琳派。逆にその自由さこそ、琳派が現在まで影響を与えている所以でもあります。
本編に入る前で紹介されているのが、神坂雪佳の《光悦村図》。秋景色を眺める画面左上の老人が、琳派の創始者・本阿弥光悦です。
神坂雪佳は明治から昭和にかけ、生涯を通じて京都で活躍しました。京都における近現代の琳派を牽引した人物で、本展で最も多くの作品が展示されています。
神坂雪佳《光悦村図》京都国立近代美術館展示は3章構成で、作品の並び順は混ざっている部分がありますが、ここでは章ごとにご紹介いたします。
1章は「琳派モティーフ」。風神雷神、カキツバタ、梅、鹿、鶴など有名な琳派作品からピックアップしたモティーフを使い、琳派への想いが込められた作品が紹介されています。
なお、展示されている作品は絵画だけでなく工芸品、グラフィック、さらにファッションまでと多彩。さまざまなジャンルを対象にしてきた
京都国立近代美術館の活動方針に沿っています。
1章「琳派モティーフ」2章は「金銀・装飾」。「豪華な金屏風に装飾的な描写」は、多くの人がイメージする琳派の典型像です。近現代の作品にも、この特徴を用いる事で琳派を意識させる作品が数多く見られます。
洋画家の浅井忠は風景画の印象が強いですが、パリ万博でアールヌーヴォーに触れて以来、日本独自の意匠を模索し、琳派に傾倒していきました。浅井が手がけた工芸品の図案も、琳派の影響を強く感じさせます。
2章「金銀・装飾」最後は3章「広がる琳派イメージ」。ここでは琳派の枠組みを広くとらえ、池田満寿夫からマティスまで紹介します。
高橋秀の《蒼》は、アクリル絵具のドリッピング(空中から塗料を滴らせる技法)作品ですが、その構成はまさに琳派。アクション・ペインティングと琳派という意外な組み合わせは、新鮮に感じられます。
3章「広がる琳派イメージ」ちょうど
京都国立博物館では江戸時代の琳派を取り上げる「
琳派 京(みやこ)を彩る」展が開催中。通して見る事で、創始期から現代までの琳派の流れをお楽しみいただけると思います。
京都国立博物館から
京都国立近代美術館まではバスで25分程度、230円です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年10月9日 ]■京都国立近代美術館 琳派イメージ に関するツイート