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    レポート
    美を創る 京都市立芸術大学 日本画コレクションを中心に
    京都府立堂本印象美術館 | 京都府
    京都の誇り「美工・絵専」
    東京美術学校(現:東京藝術大学)の開校より9年も早く、1880(明治13)年に開校した京都市立芸術大学。日本最古の芸術系大学である同校は、長い歩みの中で優れた美術家を数多く輩出してきました。同校ゆかりの作家を紹介する展覧会が、京都府立堂本印象美術館で開催中です。
    (左から)村上華岳《裸婦 画稿》 / 猪原大華《池》 / 清水六兵衛(六代)《鷲》 / 琴塚英一《萩苑》 いずれも京都市立芸術大学芸術資料館
    (左から)岡本神草《口紅》 / 稲垣仲静《豹》 ともに京都市立芸術大学芸術資料館
    (左から)土田麦僊《髪》 / 小野竹喬《南国》 ともに京都市立芸術大学芸術資料館
    (左から)吉川観方《入相告ぐる頃》 / 望月玉成《花鳥図》 ともに京都市立芸術大学芸術資料館
    (左から)宇田荻邨《野々宮》 / 三輪晃勢《葡萄》 ともに京都市立芸術大学芸術資料館
    山本知克《家》京都市立芸術大学芸術資料館
    (左から)堂本印象《深草(小下絵)》 / 堂本印象《深草村》 ともに京都府立堂本印象美術館
    (左から)堂本印象《落葉》 / 堂本印象《きじ鳩》 ともに京都府立堂本印象美術館
    資料室の扉、手摺子、椅子、壁面のタペストリーなど、館内各所に堂本印象による装飾が施されています
    年に一度のペースで、京都における美術教育を紹介する企画展を開催している京都府立堂本印象美術館。今年は京都市立芸術大学をとりあげています。

    明治維新により、首都の座を東京に奪われた京都。文化面での優位性を守るために取った施策が、美術家を養成する学校の設立でした。

    こうして誕生したのが、京都府画学校です。京都市立美術工芸学校(美工)など何度かの改名を経て、1909年に上級学校として京都市立絵画専門学校が設立されました。地元の京都市民が親しみをこめて「絵専」(かいせん)と呼ぶこの学校が、現在の京都市立芸術大学です。

    堂本印象自身が、絵専の卒業生であり教員でした。展示室に至る通路で、堂本印象の学生時代・教員時代の写生や、堂本印象が同校に寄贈した古美術品が展示されています。


    堂本印象の作品など

    展覧会は、2月6日から後期展がスタート。教員ゆかりの作品を紹介した前期展に続き、後期展では日本画卒業生に焦点を当てています。

    京都画壇の雄・竹内栖鳳の尽力で設立された絵専。教員も日本画の重鎮が顔を揃え、彼らの薫陶を受けた若い才能が次々に巣立っていきました。

    絵専一期の同期生である村上華岳と土田麦僊は、若くして文展に入選。卒業生には文化勲章受章者も多く、後期展では徳岡神泉や小野竹喬の作品が展示されています。


    展示室で紹介されているのは、絵専の卒業制作などの大作が中心

    ここでは才能に恵まれながらも、若くして亡くなった二名をご紹介します。

    ひとり目は岡本神草。退廃的な大正デカダンスの作風で人気を博しましたが、39歳で亡くなりました。本展で展示されているのは、絵専の卒業作品《口紅》。第一回国画創作協会展にも出品され、土田麦僊に絶賛されました。舞妓の姿態と鮮やかな着物の柄が印象的です。

    もうひとりは稲垣仲静、26歳で急逝しました。同じくデカダンな人物画を得意としましたが、今回の作品は《豹》。それぞれの豹は写実的ですが、3頭の構成は装飾的。画面を覆う無数の豹柄が、強いインパクトを与えます。


    岡本神草《口紅》と、稲垣仲静《豹》

    地域の文化への愛着はどこでもありますが、京都の人々にとってその想いはひとしお。その継承者である京都市立芸術大学には、強い愛情と誇りを感じている京都の人が多いと聞きました。ちなみに森村泰昌さん、名和晃平さん、ヤノベケンジさん、やなぎみわさんらも卒業生である事を補足しておきます。

    最後に、京都府立堂本印象美術館について。静謐な日本画から大胆な抽象画へと、スタイルを大きく変えながら活躍した堂本印象。美術館は堂本印象が75歳の時に、自邸の向かいに建設したものです。


    堂本印象美術館

    印象的な外観はもちろん、館内各所の装飾は全て堂本印象が手がけました。いわば館全体が堂本印象の作品ともいえます。

    京都駅からはバスで約30分。ちょうど金閣寺と龍安寺の中間地点で、両寺からはそれぞれ徒歩10分ほどです。観光とあわせてお楽しみください。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月5日 ]

    京都のちいさな美術館めぐり京都のちいさな美術館めぐり

    岡山拓 (著), 浦島茂世 (著)

    ジービー
    ¥ 1,728


    ■堂本印象美術館 美を創る に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年12月9日(水)~2016年3月21日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00(入館16:30迄)
    休館日
    月曜日 [但し、1月11日(月・祝)開館・1月12日(火)休館/3月21日(月・祝)開館] 年末年始 [ 12月28日(月)~1月4日(月)] 展示替え期間 [ 2月1日(月)~2月5日(金)]
    住所
    京都府京都市北区平野上柳町26-3
    電話 075-463-0007
    公式サイト http://insho-domoto.com/plan/new/current/
    料金
    一般500円(400円)/高校・大学生400円(320円)/小・中学生200円(160円) 
    ( )は20名以上の団体料金
    65歳以上の方(要証明)および障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
    展覧会詳細 「美を創る 京都市立芸術大学 日本画コレクションを中心に」 詳細情報
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