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    レポート
    オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ
    サントリー美術館 | 東京都
    5章で辿る、ガレ創造の源泉
    19世紀後半から20世紀初頭にかけて欧州を席巻したアール・ヌーヴォー(新しい芸術)。ガラス、陶器、家具の分野でこの流れの中心にいたのがエミール・ガレ(1846-1904)です。国内有数のガレ・コレクションを持つサントリー美術館で、優雅で華麗なガレ・ワールドを163件、5章で紹介する展覧会が始まりました。
    (右手前)エミール・ガレ《モスクランプ風花器「蝙蝠・唐草」》1889年 サントリー美術館(菊地コレクション)
    (左奥から)ルイ・エストー《習作「蜻蛉」》1903年以降 オルセー美術館 / エミール・ガレ《脚付杯「蜻蛉」》1903-04年 サントリー美術館
    (左から)エミール・ガレ《植込鉢「水景」》1878年以降 サントリー美術館(野依利之氏寄贈) / エミール・ガレ《置時計》1880年頃 サントリー美術館(菊地コレクション)
    (左から)エミール・ガレ《小物入れ「孔雀・猟犬」》1880-90年 サントリー美術館(菊地コレクション) / エミール・ガレ《栓付瓶「アカンサス」》1898-1900年頃 サントリー美術館(菊地コレクション)
    (左手前から)エミール・ガレ《違棚「植物」》1900年頃 サントリー美術館(菊地コレクション) / エミール・ガレ《本棚「蛾」》1900年頃 サントリー美術館(菊地コレクション) / エミール・ガレ《飾棚「森」》1900年頃 サントリー美術館
    (左から)エミール・ガレ《昼顔形花器「蛾」》1900年 サントリー美術館 / エミール・ガレ《意匠「昼顔形花器〈蛾〉」》1899年 オルセー美術館
    (左から)エミール・ガレ《壺「枯葉」》1900年 サントリー美術館(菊地コレクション) / エミール・ガレ《花器「草花」》1900年 サントリー美術館
    (左奥から)エミール・ガレ《習作「6枚の枯葉」》1885-1920年 オルセー美術館 / エミール・ガレ《習作「銀杏、日本の楓の葉」》1885-1920年 オルセー美術館
    (左手前)エミール・ガレ《ランプ「ひとよ茸」》1902年頃 サントリー美術館
    高級陶器とガラス器の製造販売会社を営む家庭に生まれたガレ。10代から父を手伝って、陶器をデザインしていました。

    義勇軍に入隊し、普仏戦争に参戦したガレ。戦争はフランスの敗北に終わり、ガレの故郷(アルザス・ロレーヌ地方)は一部がドイツに割譲されます。ガレのデザインにしばしば見られるロレーヌ十字やナンシーの紋章アザミからは、ガレの強い愛国心が読み取れます。

    一方で、ガレの作品にはイスラムから東洋まで、異国情緒あふれる作品も少なくありません。万国博覧会の時代でもあったこの時代、フランスにいながら異文化に触れていたガレは、その様式を自らのスタイルに巧みに取り込んでいきます。会場にはガレが所有していた中国製の鼻煙壺(嗅ぎタバコ入れ)も展示されています。


    第1章「ガレと祖国」、第2章「ガレと異国」

    ガレの作品に数多く見られる、植物モチーフ。田園や森林をこよなく愛した母からの影響を受け、14歳頃から植物採集に出ていました。単に愛好するだけでなく、著名な植物学教授にも観察結果を提供するなど、植物学に没頭。植物学者として認められる存在でした。

    ガレは自宅に広大な庭園を所有、2000種以上の植物を、まさに身近な場所で栽培していました。植物の絵はボタニカルアートとしても極めて水準が高く、その熱心な研究は、芸術家であるガレの作品として結実しました。


    第3章「ガレと植物学」

    植物と同じようにガレの作品にしばしば登場するのが、虫、鳥、動物たち。さらにガレは海洋生物にも興味を持っていました。

    ガレは自然科学冊子などから情報を収集。制作過程で描かれたデッサン類からは、自然のモチーフを生物学的な視点から探求した模様も伺えます。


    第4章「ガレと生物学」

    ガレは学生時代にフランス語論文、ラテン語、ギリシャ語などの文系科目で優秀な成績を修めており、文学的な志向も持ち合わせていました。1880年代からは、文学者が残した印象的な一節をテーマにした作品を制作。「もの言うガラス Verrerie parlante」と呼ばれ、高いメッセージ性が見てとれます。

    エピローグで紹介されているガレの極地は、ガラスによる彫刻。ランプ「ひとよ茸」は、本来は笠を開くと一晩で溶けてしまう小さなキノコを、総高83.8センチという巨大なランプに拡大しました。か弱いキノコに宿る生命力を力強く表現しています。


    第5章「ガレと文学」、エピローグ「ガレの究極」

    現代でいうところの、アートディレクター的な立場で作品を制作したガレ(ガレ自身がガラスを吹いて作ったわけではありません)。デザイン画に細かな注意を書いて、職人に指示。認められた作品にはガレのサインが入れられおり、会場ではガレのサインについての解説もあります。

    ガレを取り上げる展覧会はよく見るように思いますが、サントリー美術館では実に8年ぶりとなるガレ展。巡回せずにサントリー美術館だけでの開催です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年6月28日 ]


    料金一般当日:1,300円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


    ■サントリー美術館 エミール・ガレ に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年6月29日(水)~8月28日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    休館日
    火曜日 ※8月16日(火)は開館
    住所
    東京都港区赤坂9-7-4  東京ミッドタウン ガレリア3F
    電話 03-3479-8600
    公式サイト http://suntory.jp/SMA/
    料金
    一般 1,300円/大学・高校生 1,000円
    展覧会詳細 オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ 詳細情報
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