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奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド

■今ではメインストリーム
【会期終了】 美術史家の辻惟雄さんが1970年に著した『奇想の系譜』。それまで書籍や展覧会で紹介されず、傍流に属していた画家たちの個性的な作品に光をあてた同著は、現在の日本美術ブームの源流となりました。傍流どころかメインストリームになった8名を紹介する展覧会が、東京都美術館で開催中です。
『奇想の系譜』で取り上げられたのは岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の6名。展覧会では白隠慧鶴、鈴木其一を加えた計8名の作品を、画家別で紹介しています。

会場冒頭は伊藤若冲。この種の展覧会では、知名度が高い画家は後半(多くの場合は一番最後)に出る事が多いので、ちょっと意外です。8人の中でも、最も大きなスペースで紹介されています。2016年の「若冲展」は45万人を動員、もう「わかおき」と読む方はいないでしょう。

花鳥画を得意とし、特に鶏は抜群。初期作と思われる《梔子雄鶏図》は初公開、逆に最晩年の《鶏図押絵貼屏風》も新出作品です。



続いて曽我蕭白。円山応挙、池大雅、与謝蕪村、そして若冲らと同じく18世紀の京都で活躍しましたが、最も個性的な作品を残した画家が蕭白です。豪快すぎる筆さばきも、繊細な描写も自由自在、人物の表情も独特です。辻さんが『奇想の系譜』を執筆するきっかけとなった《群仙図屏風》は、後期の出品です。

長沢芦雪は応挙の弟子ですが、師とは異なる大胆な構図と、機知に富んだ画風で「奇想」に相応しい画家です。《猿猴弄柿図》は大正4年の売立目録にありましたが、その後所在不明に。本展のための調査で発見されました。

辻さんの修士論文のテーマとなった《山中常盤物語絵巻》を描いたのが、岩佐又兵衛。戦国武将・荒木村重の子で、あまりにも残酷な描写は、信長に反逆を企てた一族が惨殺されたという出自が関係しているとも言われます。今回は前期で第4巻、後期で第5巻が公開されます。

狩野山雪は京狩野の狩野山楽の弟子。京都の大寺院に数多く作品を残しています。『奇想の系譜』以前は、狩野永徳 ─ 山楽 ─ 山雪と時代が下るに連れて評価も下がっていましたが、辻さんは理知的な構図に着目。その評価を一変させました。

白隠慧鶴は禅僧。禅宗では「不立文字(言葉に頼るな)」とされ、白隠も数多くの禅画を制作。蕭白、芦雪、若冲らに影響を与えた可能性も指摘されています。大分・萬壽寺の《達磨図》(通称:朱達磨)は、なんと80歳を超えて描いたものです。

鈴木其一は江戸琳派・酒井抱一の弟子。俵屋宗達 ─ 尾形光琳 ─ 抱一と連なる琳派は日本美術の王道ですが、其一は師が没した後は、次第に個性的な作風へ。伝統と独創の間を行き来しながら、多くの作品を残しました。

最後は歌川国芳。浮世絵も『奇想の系譜』以前は、鳥居清長・喜多川歌麿・東洲斎写楽らが活躍した天明・寛政年間が浮世絵最盛期で、以後は、北斎と広重の風景画以外は「その他」という扱いでした。国芳の展覧会は各地で大人気、弟子の月岡芳年も評価が上がっています。

展覧会は辻さんが特別顧問を務め、辻さんの教え子でもある山下裕二さん(明治学院大教授)が全体を監修。師弟タッグによる渾身の日本美術展となりました。巡回は無し、東京都美術館だけでの開催です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年2月8日 ]

奇想の系譜奇想の系譜

辻 惟雄 (著)

筑摩書房
¥ 1,404

料金一般当日:1,600円
 → チケットのお求めはお出かけ前にicon

 
会場東京都美術館
開催期間2019年2月9日(土)~4月7日(日)
所在地 東京都台東区上野公園8-36
TEL : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
HP : https://kisou2019.jp/
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