[PR]
静岡県浜松市に本社を構える物流会社、(株)浜名梱包輸送。同社が社会貢献の一環として開設したのが、仏教美術を中心にシルクロード文化を紹介する浜名梱包輸送シルクロード・ミュージアムです。
現在、同館では土器や土偶に焦点を当てた展覧会「土器にドキドキ! 古代文明アートにロックオン★」が開催中です。

浜名梱包輸送シルクロード・ミュージアム 入口
古代の人々の信仰や暮らしを物語る土器や土偶には、当時の自然観や美意識が色濃く反映されています。本展では、インダス文明やイラン先史時代の土器、インダス以後の文化の作品など、全87点が紹介されています。

浜名梱包輸送シルクロード・ミュージアム「土器にドキドキ展」会場
見どころのひとつが、バローチスターン地方で作られた「ジョーブ式人物土偶」全26体の一挙公開です。バローチスターンは、現在のパキスタン南西部からアフガニスタン南部、イラン南東部に広がる高原地帯で、紀元前3000年頃にはメソポタミアやインダス文明と連携し、古代文明の一翼を担っていました。
インダス以前のバローチスターンでは、豊穣を願う地母神像として女性土偶が制作され、豊かな身体つきで豊穣を象徴しています。

(手前3点)《土偶:座る女性》ジョーブ式人物土偶 前3000年~2700年頃 パキスタン
時代が下ると、装身具や身体の描写が写実的になり、彩色も施されるようになります。頸部から胸部にかけての帯状の装身具や、つまみ上げた鼻、大きな目が特徴的で、とくに両腕に幼児を抱く姿には、多産と豊穣への祈りが込められていると考えられています。

《土偶:女性》ジョーブ式人物土偶 前2700年~2500年頃 パキスタン
また、インダス文明成立直前の前2800~2400年頃には、男性土偶も現れました。それまで中心だった女性像とは異なり、男性土偶は力強さや社会的リーダー、権力者の象徴とされ、地域社会の変化がうかがえます。中には、ターバンを巻き、切れ長の目をもった神官風の像も見られます。

《土偶:男性》ジョーブ式人物土偶 前2700年~2500年頃 パキスタン
動物をかたどった土偶では、瘤牛(コブウシ)や野生ヤギなどの草食獣と、豹やチーターのような肉食獣に分かれます。なかでも瘤牛は、農耕や食料の供給源として重要視され、後にはシヴァ神の聖獣ナンディンとして信仰の対象となりました。

《コブウシ》前1000年頃 パキスタン
《ソグド人隊商》は、シルクロードを行き交った隊商の姿を写した加彩俑です。彫りの深い顔立ちのソグド人が、毛深いラクダに乗って進む様子が生き生きと表現され、いななくラクダの表情など細部まで見応えがあります。ソグド人は中国に定住し、墓には三彩や加彩の俑を納める文化を築きました。

《ソグド人隊商》加彩粘土 中国 7〜9世紀(唐時代)
コレクション展もご紹介しましょう。
シルクロード・ミュージアムを代表するコレクションが、ガンダーラから出土した《弥勒菩薩立像》。ギリシア彫刻の影響を受けたガンダーラ様式で、装身具やサンダルをまとい、髷を結った気品ある姿が印象的です。
特筆すべきは、来館者が実際に手で触れて鑑賞できること。通常の美術館ではなかなか味わえない、特別な体験を楽しめます。

《弥勒菩薩立像》2~3世紀 ガンダーラ
館内ではガラスの歴史も紹介されています。ガラス製造はメソポタミアで紀元前25世紀頃に始まり、エジプトを経て、古代シリアで吹きガラス技法が発明され、大量生産が可能に。ローマ帝国や東方世界に広がりました。
《切子ガラス碗 白瑠璃碗》は、正倉院に伝わる白瑠璃碗と形状が非常に近く、精緻なカットが施された美しい作品です。

《切子ガラス碗 白瑠璃碗》3~7世紀頃 イラン
中国の銅鏡も紹介されています。紀元前2000年頃の斉家文化に始まり、春秋戦国時代に発展。漢代には装飾や銘文が施された精巧な銅鏡が多く作られました。これらは日本や朝鮮半島にも伝播し、各地の銅鏡文化に影響を与えました。

「中国古代銅鏡」
シルクロードを通じて生まれた多様な造形や祈りのかたちに出会える展覧会。貴重な文化財をぜひ間近でお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年6月9日 ]