スペイン・カタルーニャ出身の建築家、アントニ・ガウディ(1852-1926)。2026年、没後100年を迎えるガウディの精神世界に迫る展覧会『ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展』が寺田倉庫G1ビルで始まりました。
展覧会は、ガウディの代表作であるサグラダ・ファミリアのメインタワー「イエスの塔」の完成予定も記念するもので、クリエイティブカンパニー・NAKEDとガウディ財団が、世界初となる共同事業契約を締結したことで実現したワールドツアー展です。
会場は7つのエリアに分かれ、ガウディの建築世界を多角的に紹介します。

『ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展』会場入口
ガウディの建築には、幼少期に見つけたさまざまなモチーフが登場します。 例えば、サグラダ・ファミリアの栄光のファサードの上部の塔には、小麦から着想を得た彫刻的なモチーフが施されています。これは、ユーカリスト(聖体)と豊穣の象徴でもあり、自然とキリスト教の典礼を結び付けていることがわかります。ほかにも、ニンニク、糸杉やキノコなどを模した装飾が塔の随所に見られます。

Area2「記憶の森」
1874年にバルセロナ建築学校建築学部に入学したガウディ。歴史や経済学、美学、フランス語など幅広い分野から得た知識は、後の折衷的な建築デザインに反映されていきます。会場には、卒業制作として手がけたパラニンフォ:短手断面図も展示。空間のリズムや幾何学に対する才能を感じるとともに、のちの構造的発明へとつながる萌芽も感じさせます。

Area3「創造のるつぼ、バルセロナ」
ガウディは、1878年のパリ万国博覧会にてコメーリャ手袋店のショーケースをデザインします。その独創性が実業家エウセビ・グエルの目に留まったことをきっかけに、2人は生涯にわたる協働となりました。
世界遺産のグエル邸は、バルセロナに1886年~1890年に建てられたもので、ゴシック様式を再発明し、シンプルでありながら荘厳な建物です。ホールと礼拝堂の上に建つ宇宙の象徴であるドームからは、光が差し込み、刻々と変化する光と影の表情が、空間に豊かな表情を与えています。

Area3「創造のるつぼ、バルセロナ」
アトリエを再現した空間では、重力や張力といった目に見えない自然の力を観察したガウディの思考に迫ります。1893年に作られたパーフェクトスコープ眼鏡は、建築デザインを3次元で視覚化するために使用したものです。ステレオ写真を用いて、奥行きと空間効果をシミュレーションすることで現地での見え方を把握していました。

Area4「ガウディの工房」
直感や装飾ではなく、物理法則から生まれる必然的な形に美しさを見出していたガウディ。天井から垂らした重りから浮かび上がる曲線を最も純粋な形と考え、「自然によって設計された建築」の起源が生まれました。
さらに複雑な建物を設計するために開発されたのが、アーチと支柱の理想的な配置をするポリフニキュラー模型です。デジタル・ポリフニキュラー模型体験では、画面上の点と線を結び、重さや長さを変えながら、自分だけの建築を設計するプロセスを体験できる内容です。
ほかにも、ガウディが繰り返し行っていた“重力の実験”を手で触れることもできます。模型を鑑賞するのではなく、鎖を付け替えたり重ねたりすることで、生きている設計図に、みんなで同時に触れる体験です。

Area4「ガウディの工房」
建築物の構造には、植物や生物、割れたタイルや陶片を組み合わせるトレンカディスが構造に取り込まれています。
内装においても美しさを追求したガウディは、名匠の家具職人と協働し、洗練されながらも革新的な家具を生み出しました。バロックの影響を感じる豪華な彫刻や液体のように流れ出すような曲線の椅子など、快適さと視覚的なリズムのバランスが取れています。

Area5「生命のかたち」
このエリアでは、世界初公開となる若きガウディが記したと考えられている貴重な手記も展示されています。1876年から78年ごろに書かれたものとされ、幾何学の役割や構造と象徴性の関係、空間がもたらす感覚的な影響など、後の建築作品へとつながる発想が随所に見られます。

Area5「生命のかたち」世界初公開 ガウディの手記
没入型の映像空間では、ガウディの生涯と精神を体現することができます。多くの支援者によって完成へと近づいているサグラダ・ファミリア。自然のかたちや光の中でゆっくりと浮かびあがるサグラダ・ファミリアから、さまざまな人々の想いや完成に向けたプロセスを感じることができます。

Area6「サグラダファミリア 永遠の聖堂」

Area6「サグラダファミリア 永遠の聖堂」
ガウディが生涯をかけて追求した「創造の原理」は、没後100年が経った現在でも世界中の建築家や芸術家をはじめ様々な人々に受け継がれています。
最後のエリアでは、サグラダ・ファミリアの模型や設計図が並んでいます。初期の設計構想を記録した貴重な資料や隣接に提案された美術館建築との関係性を示した資料など、当時の構想の多角的に分かります。

Area7「未来への種」
没後100年を迎えようとする今もなお、ガウディの建築は「完成」ではなく、未来へと続く思考のプロセスとして生き続けています。会場では、ガウディの遺した建築を“見る”だけでなく、その思想に触れ、未来へと受け継ぐための体験の場となっています。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2026年1月9日 ]