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レポート
美術館で”藝大生”になる夏 ─ 「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」(レポート)
東京藝術大学大学美術館 | 東京都
東京藝術大学の現役教員による 12の講義を「履修」するように楽しむ展覧会
小倉遊亀、黒田清輝、ゴッホなどの名品を通して、「美術のミカタ」を学ぶ
実際の藝大教育に触れられる、ワークショップも開催。参加型の企画も充実

「藝大生になってみたい。」そんな夢のような体験をかなえる展覧会が、東京藝術大学大学美術館で始まりました。

「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」は、東京藝術大学の現役教員が担当する12の講義を、美術館の展示として体験できる新しい試みです。美術史や日本画、版画、保存修復、デザインなど、多彩なテーマを、同大学が誇るコレクションを教材として学ぶことができます。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」
東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」


展覧会は大学の授業にならって全12限で構成。1限は「まねぶ美術館」です。

東京美術学校では、西洋画教育の重要な方法として模写が取り入れられてきました。単に画面を写すだけではなく、技法や作者の意図、時代背景まで理解するための学びです。

会期中には現役の藝大生による模写も実施。作品が少しずつ描かれていく過程そのものを鑑賞できます。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 1限は「まねぶ美術館」
1限は「まねぶ美術館」


2限は「西洋美術に出会った日本 工部美術学校から東京美術学校へ」。明治9年(1876)に設立された工部美術学校を経て、明治29年(1896)には東京美術学校に西洋画科が設置されました。黒田清輝や久米桂一郎らによって、西洋画教育の基盤が整えられていきます。

藝大が所蔵する作品や教育資料を通して、日本が西洋美術と出会い、「洋画」というジャンルを確立していく過程をたどります。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 2限「西洋美術に出会った日本 工部美術学校から東京美術学校へ」
2限「西洋美術に出会った日本 工部美術学校から東京美術学校へ」


3限は「東京藝大で教わる西洋美術の見かた 女性画家ラグーザ玉の戦略」。明治期にイタリアへ渡ったラグーザ玉(清原玉、1861-1939)は、現地のアカデミーで油彩画を学び、画家として活動しました。

日本からイタリアへと環境が変わるなかで、その画風も変化。代表作《春》などを通して、異国で女性が画家として自立するために、当時の流行をどのように取り入れていったのかを探ります。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 3限「東京藝大で教わる西洋美術の見かた 女性画家ラグーザ玉の戦略」
3限「東京藝大で教わる西洋美術の見かた 女性画家ラグーザ玉の戦略」


6限は「模刻から学ぶ 仏像の保存修復」。東京美術学校では岡倉天心の主導により、文化財保護と古典彫刻研究のために模刻制作が行われました。

会場では同大学が所蔵する原像と模刻像を比較するとともに、修復中の実作品も紹介。文化財から何を読み取り、どのように次世代へ伝えていくのか、保存修復の現場に迫ります。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 6限「模刻から学ぶ 仏像の保存修復」
6限「模刻から学ぶ 仏像の保存修復」


7限「藝大美術館に住む動物たち」は、子どもたちの人気も集めそうです。

猫や犬、鳥などを題材にした絵画や彫刻が集合。時代やジャンルの異なる作品を見比べながら、動物の表情や姿勢、作家による捉え方の違いを楽しみます。

専門知識がなくても、「かわいい」「おもしろい」と感じるところから、美術作品を見る楽しさを広げていく講義です。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 7限「藝大美術館に住む動物たち」
7限「藝大美術館に住む動物たち」


8限は「鑑賞体験におけるデジタル技術の可能性」。東京藝術大学では、作品だけでなく創作の過程や背景も芸術資源として捉え、保存・継承しながら新たな創造につなげる「クリエイティヴ・アーカイヴ」に取り組んでいます。

ここでは作品の3D映像や材料サンプルを使った鑑賞体験から生まれた言葉をAIで解析。他者との感じ方の違いを知ることで、作品を見る新たな視点へとつなげます。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 8限「鑑賞体験におけるデジタル技術の可能性」
8限「鑑賞体験におけるデジタル技術の可能性」


11限「東京藝術大学と中国人留学生〜胡根天の留学と帰国後の活動〜」は、興味深いリサーチプロジェクトです。

約100年前に東京美術学校西洋画科で学んだ中国人留学生、胡根天(1892-1985)に焦点を当てます。帰国後は広州で美術教育に携わり、日本での経験を中国の近代美術教育へとつなげました。

大学に残る史料に加え、中国での現地調査や遺族から提供された未発表資料も紹介。芸術を通じて人や文化が国境を越えてつながってきた歴史を見つめます。


東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」会場より 11限「東京藝術大学と中国人留学生〜胡根天の留学と帰国後の活動〜」
11限「東京藝術大学と中国人留学生〜胡根天の留学と帰国後の活動〜」


模写、保存修復、デジタル技術、さらには美術をめぐる国際交流まで、多彩な「授業」から美術の見方を学べる本展。は親子で楽しめる体験展示やワークシートも用意されています。

専門知識を得るだけではなく、作品をどう見るか、どう考えるかという、美術鑑賞そのものの楽しさを教えてくれます。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年7月23日 ]

4限「岡倉天心『茶の本』を読む
9限「大正〜昭和初期 東京の文化的変容」
会場
東京藝術大学大学美術館
会期
2026年7月24日(Fr)〜9月23日(We)
開催中[あと58日]
開館時間
午前10時 - 午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日
月曜日(ただし、8月10日と9月21日は開館)
住所
〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://geidai-art-mikata.jp/
料金
当日券
一般 2,000円
大学生 1,200円
中・高校生 600円
展覧会詳細 藝大式 美術の "ミカタ" 詳細情報
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