土を成形し、焼き上げることで生まれる「やきもの」。中国で生み出された高度な技術は朝鮮半島や日本へと伝わり、それぞれの土地の文化や美意識と結びつきながら、多彩な陶磁器を生み出してきました。
根津美術館で開催中の「やきもの名品紀行 中国・日本・朝鮮半島」では、同館の陶磁器コレクションから中国、日本、朝鮮半島の名品を紹介。時代や地域を越えて受け継がれた技術と、それぞれに花開いた造形や装飾の魅力をたどります。

根津美術館
展示室1では、中国陶磁を紹介します。約1万年におよぶ歴史のなかで革新的な技法を生み出し、世界のやきものをリードしてきた中国。その高い技術と華やかな表現は、後の日本や朝鮮半島の陶磁器にも大きな影響を与えました。
《緑釉四層楼閣》は、死後の世界でも不自由なく暮らせるよう墓に納められた「明器」のひとつです。四層の楼閣をかたどり、二・三層には楽器を奏でる人物が配されています。当時最先端だった建築の姿を伝える資料としても興味深い作品です。

《緑釉四層楼閣》中国・後漢時代 1~2世紀 根津美術館蔵
重要文化財《青花花卉文大皿》は、太湖石を中心に、鶏頭など四季の草花を青花で描いた大皿です。
白い胎土と鮮やかなコバルトの青、多彩な草花文から、明時代の永楽年間(1403~24)に景徳鎮でつくられたと考えられています。

重要文化財 景徳鎮窯《青花花卉文大皿》中国・明時代 15世紀 根津美術館蔵
明時代の景徳鎮窯で生産された「金襴手」も見どころです。
重要文化財《五彩宝相華文瓶》は、堂々とした下膨れの器形に亀甲文をめぐらせ、大きな花菱形の窓には金彩による牡丹唐草文を表現。色絵と金彩が響き合う、華やかな一品です。

重要文化財 景徳鎮窯(金襴手)《五彩宝相華文瓶》中国・明時代 16世紀 根津美術館蔵
続く展示室2は日本陶磁。中国や朝鮮半島から伝わった技術を取り入れながら、17世紀以降に大きく発展し、素朴な土ものから華麗な色絵磁器まで、多様なやきものが生み出されました。
京焼を代表する陶工、野々村仁清による重要文化財《色絵山寺図茶壺》は、金銀や赤、青、緑、黒を用いて山寺の風景を描いた作品です。水辺の船や楼閣、塔をもつ寺院、夕陽に染まる満開の山桜が壺の曲面いっぱいに広がり、仁清作品のなかでも特に高い絵画性を示しています。

重要文化財 野々村仁清《色絵山寺図茶壺》江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
海外へ輸出された柿右衛門には、動物や人物をかたどった立体的な作品もあります。
《色絵鶏香炉》は、鶏そのものを香炉に仕立てたユニークな一品。口や耳の裏、羽に煙出しが設けられ、青みを帯びた白い羽が端正な姿を引き立てています。

肥前《色絵鶏香炉》江戸時代 17~18世紀 根津美術館蔵(山本正之氏寄贈)
2階の展示室5では、朝鮮陶磁を紹介します。中国から技術を受容しながら、清らかさや実用性を重んじる独自の美意識を育んだ朝鮮半島のやきもの。自然な作陶から生まれる、穏やかな造形も魅力です。
重要文化財《青磁蓮華唐草文浄瓶》は、最高峰の高麗青磁として早くから知られてきた作品です。端正な器形に、蓮唐草文を浅い片切彫と細かな毛彫でびっしりと表現。その文様などから、高麗青磁の最盛期を支えた全羅南道康津郡沙堂里で制作されたと考えられています。

重要文化財《青磁蓮華唐草文浄瓶》朝鮮半島・高麗時代 12世紀 根津美術館蔵
《青花草花文壺》には、十字架形の花と菊、蘭が三方向に描かれています。日本では、こうした儚げな草花文を「秋草手」と呼んで愛好してきました。
余白を大きく残した乳白色の器面に、青花の草花が静かに浮かび上がります。

広州官窯《青花草花文壺》朝鮮半島・朝鮮時代 18世紀 根津美術館蔵(秋山順一氏寄贈)
中国から朝鮮半島、日本へ。技術や様式が海を越えて伝わる一方、それぞれの土地で異なる美意識が育まれてきたことが、器を見比べることで浮かび上がります。
華麗な装飾から素朴な造形まで、根津美術館のコレクションをめぐりながら、東アジアのやきものの豊かな広がりを楽しめる展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年8月14日 ]