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レポート
浮世絵誕生の瞬間 ─ 静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場」(レポート)
静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館) | 東京都
浮世絵の始祖・菱川師宣の代表作である「十二ヶ月風俗図巻」を全画面公開
教科書でもお馴染み。東京国立博物館「見返り美人図」も2週間限定で公開
師宣から始まった浮世絵の流れと、江戸後期の「師宣リバイバル」まで紹介

19世紀末の「見返り美人図」で知られる菱川師宣は、庶民の日常や流行を生き生きと描き出し、浮世絵という新たな表現を切り開いた画家です。その画風は江戸時代を通じて受け継がれ、後世の浮世絵や風俗画にも大きな影響を与えました。

静嘉堂文庫美術館で開催中の「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」では、代表作《十二ヶ月風俗図巻》を前後期に分けて全画面公開。《見返り美人図》をはじめとする名品や、英一蝶、宮川長春らの作品を通して、元禄文化の華やかな世界と、師宣が築いた浮世絵の系譜を紹介します。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 会場入口
静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場入口


江戸の庶民が主役となる風俗画は、16世紀末から17世紀初頭にかけて発展しました。本展では、師宣以前の風俗画からたどることで、浮世絵誕生の背景をわかりやすく紹介しています。

《四条河原遊楽図屛風》には、京都・四条河原に集う人々の賑わいが描かれます。歌舞伎や見世物小屋、茶店などが細密に表現され、近世初期の都市文化の熱気が画面いっぱいに広がります。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 重要文化財《四条河原遊楽図屛風》江戸時代 寛永期(1624〜44)頃(公財)静嘉堂
重要文化財《四条河原遊楽図屛風》江戸時代 寛永期(1624〜44)頃(公財)静嘉堂[通期展示]


菱川師宣は近世初期風俗画の伝統を受け継ぎながら、美人画や遊里、町人文化など「浮世」のイメージを確立しました。その代表作が《見返り美人図》です。

流行の着物や帯、髪形を巧みに描き分けた本作は、美人画であると同時に元禄ファッションを伝える貴重な作品。日本美術を代表する名品であり、会期前半の2週間限定で公開されます。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 菱川師宣《見返り美人図》江戸時代 元禄元〜7年(1688~94)頃 東京国立博物館
菱川師宣《見返り美人図》江戸時代 元禄元〜7年(1688~94)頃 東京国立博物館[展示期間:6/27~7/12]


本展の中心となる《十二ヶ月風俗図巻》は、師宣晩年の代表作です。武家の注文で制作されたと考えられる肉筆画で、一年の行事や遊興、子どもたちの姿などを豊かな構成で描いています。

令和3〜4年度の解体修理では、裏彩色が全面に施されていることや、複数の絵師が制作に関わったことなど新たな知見も判明しました。前期は上巻、後期は下巻が展示されます。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 菱川師宣《十二ヶ月風俗図巻》江戸時代 元禄5~6年(1692~93)頃 (公財)静嘉堂
菱川師宣《十二ヶ月風俗図巻》江戸時代 元禄5~6年(1692~93)頃 (公財)静嘉堂[上巻の展示期間:6/27~7/26、後期は下巻を展示]


重要文化財《歌舞伎図屛風》は、芝居町から舞台、観客席、楽屋、芝居茶屋まで、江戸歌舞伎の世界を285人もの人物で描き尽くした壮大な作品です。

役者や観客、働く人々まで細やかに描かれ、元禄の芝居小屋の熱気が伝わってきます。富裕層の注文制作と考えられる、師宣晩年を代表する傑作です。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 重要文化財 菱川師宣《歌舞伎図屛風》江戸時代 元禄5~6年(1692~93)頃 東京国立博物館
重要文化財 菱川師宣《歌舞伎図屛風》江戸時代 元禄5~6年(1692~93)頃 東京国立博物館[展示期間:6/27~7/26]


《上野隅田川図屛風》には、上野の花見から浅草、隅田川、吉原へと続く江戸の名所と人々の暮らしが描かれています。華やかな都市文化を一望できる作品です。

師宣風の構成を受け継ぎながら、江戸の名所や遊興の風景を活写した本作からは、元禄文化の広がりと、その後の風俗画への影響を読み取ることができます。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 《上野隅田川図屛風》江戸時代 元禄~享保期(1688~1736)頃 (公財)静嘉堂
《上野隅田川図屛風》江戸時代 元禄~享保期(1688~1736)頃 (公財)静嘉堂[通期展示]


師宣の没後、長男・師房の代で菱川派は途絶えますが、その表現は宮川長春や英一蝶へと受け継がれ、さらに江戸後期には山東京伝らによって再評価されました。元禄文化への憧れは、鈴木其一らの時代にも受け継がれていきます。

会場では、師宣一人の作品を紹介するだけでなく、その前後の作品をあわせて展示することで、浮世絵誕生から発展までの流れを立体的にたどることができます。


静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場より 会場
静嘉堂文庫美術館「元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開」会場


《見返り美人図》や《十二ヶ月風俗図巻》をはじめ、重要文化財の数々を通して、元禄という時代に花開いた新しい美意識を体感できる展覧会です。庶民の暮らしや流行を生き生きと描いた師宣の眼差しは、三百年以上を経た今もなお、新鮮な魅力を放っています。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年6月26日 ]

(左から)古山師継《草紙洗小町図》江戸時代 宝永~享保期(1704~36)頃(公財)静嘉堂 / 古山師重《石山寺図》江戸時代 貞享~元禄10年(1684~97)(公財)静嘉堂[ともに通期展示]
フォトスポットの「見返り美人図 着用小袖」
会場
静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)
会期
2026年6月27日(Sa)〜8月23日(Su)
開催中[あと55日]
開館時間
10:00 – 17:00 ※入館は閉館の30分前まで
7月3日(金)・10日(金)は師宣劇場【見返り美人図ナイト】!20:00まで開館
*第4水曜 7月22日(水)は20:00まで開館
*8月21日(金)、22日(土)は19:00まで開館
休館日
毎週月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火)
住所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://www.seikado.or.jp/
料金
一般 1500円
大高生 1000円
障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む) 700円
中学生以下 無料
お得な前期後期セット券 2500円
展覧会詳細 元禄! 師宣劇場 詳細情報
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