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レポート
求愛から子育てまで、命をつなぐ戦略 ─ 特別展「生きものたちの性」(レポート)
国立科学博物館 | 東京都
オスとメスの違いから性転換まで、生きものの性のあり方を紹介する特別展
巨大なゾウアザラシや求愛するクモ、雌雄の特徴を併せ持つチャボにも注目
国立科学博物館で「性」をテーマにした特別展は初めて。多彩な性のあり方

生きものにとって、子孫を残すために欠かせない「性」。私たちになじみのあるオスとメスの違いも、自然界に目を向けると、驚くほど多様な姿が見えてきます。

東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「生きものたちの性」は、同館が初めて「性」をテーマにした展覧会。さまざまな生きものの体のつくりや求愛行動、性が決まる仕組み、子育てなどを通して、生命の不思議に迫ります。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 国立科学博物館「生きものたちの性」会場入口
国立科学博物館「生きものたちの性」会場入口


第1章「性のすがた」では、身近なオスとメスの違いから、生きものの性を考えます。同じ種でも姿が大きく異なるもの、よく似ているもの、ひとつの体に両方の性を備えるものなど、そのあり方はさまざまです。

オスがつくる精子とメスがつくる卵が受精し、新たな個体が生まれる「有性生殖」。多くの生きものに共通する仕組みですが、そこに至るまでの体の特徴や行動には、多様な進化が見られます。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 第1章「性のすがた」会場
第1章「性のすがた」会場


植物の性を紹介する展示では、バナナにも注目。バナナは同じ株に雄花と雌花が咲き、最初に咲く雌花が果実になります。

私たちが食べている栽培バナナは、受粉や受精をしなくても果実が育つため、通常は種子がありません。身近な果物にも、興味深い生殖の仕組みが隠されています。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 「バナナの性」
「バナナの性」


第2章「性の形と行動」では、生きものたちの出会いや求愛、繁殖のために発達した体の特徴を紹介します。色や形、におい、音などを駆使した求愛や、オス同士の競争など、子孫を残すための戦略は多彩です。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 第2章「性の形と行動」会場
第2章「性の形と行動」会場


ミナミゾウアザラシは、オスとメスで体の大きさが大きく異なる動物。オスは体重3~5トンにも達し、メスの3倍以上になることがあります。

1頭のオスが多数のメスを従える「ハレム」を形成するため、オス同士の争いは激しく、大きく力のある個体が繁殖に有利になります。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より ミナミゾウアザラシ(左:オス、右:メス) 国立科学博物館
ミナミゾウアザラシ(左:オス、右:メス) 国立科学博物館


マリア・フェルナンダ・カルドーゾの《芸術の起源について I-II》は、オーストラリアに生息するピーコックスパイダーの求愛ダンスを題材にした映像作品です。

小さなクモが見せる鮮やかな模様や、求愛の際に生じる微細な振動を、人間が体感できるスケールで表現。自然科学と芸術が交わる、ユニークな展示です。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より マリア・フェルナンダ・カルドーゾ《芸術の起源について I-II》2016年
マリア・フェルナンダ・カルドーゾ《芸術の起源について I-II》2016年


生殖器の多様性も見どころです。セミクジラでは、メスが短期間に複数のオスと交尾することが知られ、オス同士の精子競争が起きていると考えられています。

オスは巨大な精巣と長いペニスを持ち、大量の精液を放出することで、自分の精子が受精する可能性を高めていると考えられています。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より セミクジラのペニス(オス) 国立科学博物館
セミクジラのペニス(オス) 国立科学博物館


第3章「性の決定・分化」では、オスとメスがどのように決まるのか、その仕組みに迫ります。生きものの性は、染色体だけでなく、成長や周囲の環境などによっても変化します。

受精卵から体がつくられる過程で性が決まり、それぞれの特徴が形成されていく仕組みを、さまざまな生きものの事例から紹介します。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 第3章「性の決定・分化」会場
第3章「性の決定・分化」会場


《チャボ(ギナンドロモルフ)》は、ひとつの個体にオスとメスの特徴が混在する「雌雄モザイク」の標本です。

トサカや右足の蹴爪にはオスの特徴がある一方、左足や短めの尾羽にはメスの特徴が見られます。体の細胞ごとに性が決まる仕組みを、実際の姿から知ることができます。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より チャボ(ギナンドロモルフ) 東京大学総合研究博物館
チャボ(ギナンドロモルフ) 東京大学総合研究博物館


成長に伴って性を変える「性転換」も、生きものの繁殖戦略のひとつです。

コブダイは、メスとして成長した後、大きくなるとオスに性転換する魚。体が小さいうちはメスとして繁殖し、十分に成長してからオスになることで、子孫を残す機会を増やします。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より コブダイ(メスからオスへ性転換) 国立科学博物館
コブダイ(メスからオスへ性転換) 国立科学博物館


第4章「性と子育て」では、次の世代へ命をつなぐための子育てに注目します。生きものによって、メスだけで育てるもの、オスが担うもの、両方が協力するものなど、方法はさまざまです。

哺乳類では、出産後の母親の体や行動がホルモンの働きによって変化します。一方、オスが子育てをする種や、両親が協力する種もあり、それぞれの環境に応じた繁殖戦略が見られます。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 第4章「性と子育て」会場
第4章「性と子育て」会場


第5章「オス・メスだけでは語れない性の多様性」では、一般的なオスとメスの区分に収まらない、さまざまな生殖のあり方を紹介します。

植物には雌雄同体のものが多く、動物にも両方の性を備える種が存在します。また、受精を必要としない「無性生殖」で増える生きものも。自然界には、多彩な方法で命をつないできた生きものたちがいます。


国立科学博物館「生きものたちの性」会場より 第5章「オス・メスだけでは語れない性の多様性」会場
第5章「オス・メスだけでは語れない性の多様性」会場


エピローグ「性はどのように生まれたか?」では、そもそも性とは何なのか、その起源に目を向けます。

有性生殖では、異なる配偶子が融合することで遺伝子が混ぜ合わされ、新たな組み合わせが生まれます。生きものの多様性を生み出す、この仕組みの成り立ちについて考えます。

国立科学博物館「生きものたちの性」会場より エピローグ「性はどのように生まれたか?」会場
エピローグ「性はどのように生まれたか?」会場

オスとメスの姿の違いから、求愛、性転換、子育て、そして性の起源まで。生きものの「性」をたどると、生命が進化のなかで獲得してきた、実に多様な仕組みが見えてきます。

身近な生きものにも、私たちの知らない驚きが隠されていることに気づかされる展覧会です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2026年10月30日 ]

国立科学博物館「生きものたちの性」会場
国立科学博物館「生きものたちの性」会場
会場
国立科学博物館
会期
2026年10月31日(Sa)〜2027年2月21日(Su)
開催中[あと109日]
開館時間
9時~17時 (入場は16時30分まで)
休館日
月曜日、11月4日・24日、12月28日~2027年1月1日、1月12日。11月2日・23日、2027年1月11日、2月15日は開館。
住所
〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20
電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://www.ikimono-sei.jp/
料金
一般・大学生 2,300円、小・中・高校生 600円、未就学児無料。
展覧会詳細 生きものたちの性 詳細情報
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