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SOMPO美術館 50周年記念インタビュー ③
─ 美術館を支え、街と未来へひらく3人の仕事

(左から)出口 知子(SOMPO美術館 事務局長) / 本條 志穂(SOMPO美術館 グッズ担当) / 杉本 典子(SOMPO美術館 広報担当)
展覧会をつくる学芸部門とともに、美術館のブランディングや広報、記念グッズの開発、地元・新宿の企業や学校とのコラボレーションを担うスタッフたち。SOMPO美術館の開館50周年プロジェクトは、それぞれの専門性と現場で培った経験、そしてチームワークの結実でした。
美術館運営に長年携わり、プロジェクトの中心を担った、事務局長の出口知子さん、グッズ担当の本條志穂さん、広報担当の杉本典子さんの3人に、50周年事業を支えた仕事と、そこに込めた思いを伺いました。
■ 50周年プロジェクトをスタートさせるにあたり、どのような構想から準備を進められたのでしょうか?
出口:プロジェクトを立ち上げる時、「誰に何を伝えるか」をまず考えました。東京には150年もの歴史を誇る東京国立博物館をはじめ、100周年を迎えた東京都美術館など、素晴らしい美術館や博物館がたくさんあります。その中で当館の強みは何かと考えた時、行き着いたのが「新宿」という街そのものでした。50年歩んできたこの街への感謝を伝えるとともに、次の50年につながるご縁を生み出したいという思いがありました。
出口:メインテーマの『美術・新宿・ココロの再発見。』にある「再発見」は、50周年期間に開催する各展覧会の特徴を担当学芸員からヒアリングし、共通するワードとして設定したものです。このメインテーマのもとで各種イベントやグッズなども企画し、新宿の街に変わらずある街の魅力を見つけたり、美術作品を通じて自分の心を見つめ直すきっかけにしてほしい。ちょうど2026年1月に「モダンアートの街・新宿」展が予定されていたこともあり、最高のめぐり合わせでプロジェクトが本格始動しました。

出口 知子(でぐち ともこ) SOMPO美術館 事務局長。1999年入社。長年総務や財団・美術館の運営全般に携わり、50周年プロジェクトの企画リーダーを務める。
■ 学芸部門が展覧会をつくる一方、皆さまはその魅力を届け、美術館と人や街をつなぐ役割を担っています。スタッフから見たSOMPO美術館の魅力や強みとは何でしょうか?
出口:広すぎず、疲れにくく、1人でもふらっと訪れやすいサイズ感ですね。鑑賞の余韻を楽しめる心地よいスケール感なんです。スマホ版の年間パスポートも導入しているので、お仕事帰りやお買い物の隙間時間に「お散歩感覚」で立ち寄っていただける身近さが魅力だと思います。
杉本:コンパクトだからこそ、美術館とお客様の距離が近く、声がダイレクトに届くのも特徴です。アンケートやお問い合わせに全員で目を通し、WEBページの案内をすぐ修正したりマイナーチェンジを重ねたりと、全員で柔軟に対応できるアットホームなチームワークがあります。
本條:2020年に高層階から現在の新館へ降りてきて、より街に開かれた存在になりました。2階のミュージアムショップは展覧会のチケットがなくても気軽に入っていただけるので、日常の延長で立ち寄っていただける「親しみやすさ」を大切にしています。

杉本 典子(すぎもと のりこ) SOMPO美術館 広報担当。2006年より勤務。広報業務を一貫して担当し、50周年のビジュアル制作や特設サイト、式典広報を推進。
■ 50周年ロゴマークや特設サイト、1月の記念式典の制作エピソードをお聞かせください。
杉本:ロゴマークを決める際、当館の大ファンでもあるデザイナーさんに様々な視点の案を出していただきました。私たちは「きっと《ひまわり》モチーフが選ばれるだろう」と思っていたのですが、学芸チームにヒアリングしたところ、なんと全員一致で東郷青児の《超現実派の散歩》をモチーフにした案だったんです。館名に「東郷青児」の名はなくなっても、私たちの根底には東郷青児の美学が強く息づいているのだと再確認した瞬間でした。
杉本:特設サイトの「私とSOMPO美術館」という企画でゆかりの方々にコメントをお願いした際も感動的でした。 1000字近い熱いメッセージを寄せていただいた方もいらっしゃり、残念ながらスペースの関係で一部しか載せられませんでしたが、多くの方の熱い思いに支えられているのだと実感しました。式典の準備も含め年末年始は怒涛の忙しさでしたが、テープカットの瞬間の達成感と高揚感は忘れられません。

本條 志穂(ほんじょう しほ) SOMPO美術館 グッズ担当。1998年入社。ミュージアムショップ運営や50周年記念グッズ開発、新宿地域コラボを担当。
■ 記念グッズに加え、地元・新宿の企業や学校との幅広いコラボレーションも展開されていますね。
本條:記念グッズで真っ先に企画したのが手ぬぐいです。「プリントではなく、職人さんが染め上げる伝統の『注染』で作る」という点には、特にこだわりました。裏表なくきれいに染まる注染ならではの風合いに仕上がり、本当に納得のいくものができました。
本條:オリジナルロゴバッグは青・黄・緑・黒の4色で作ったのですが、展覧会ごとに売れ筋の色が変わるようです。「山口華楊展」の時は緑が1番売れたりして、毎週の会議で売上デッドヒートを楽しんでいます。但馬屋珈琲店、文明堂東京、明山茶業、ユニクロなど、新宿の皆様とのあたたかいコラボが実現したことも大きな財産になりました。

職人の手仕事「注染」にこだわって制作された50周年記念手ぬぐい
■ 最後に、開館50周年を迎え、これからのSOMPO美術館が目指す姿について思いをお聞かせください。
本條:今回ご縁ができた新宿の老舗企業の皆様のように、当館も新宿の街になくてはならない「老舗の一員」になれるよう、地域に根ざした親しまれる美術館を目指してグッズやショップづくりを続けていきたいです。
杉本:デザイナーさんから「50周年はゴールではなく通過点。100年を迎えた時に振り返って『50周年もちゃんとやってたね』と思ってもらえるように」という言葉をいただき、ハッとしました。これからも新宿の街に咲く美術館として、皆様に愛される発信を続けていきます。
出口:色々とお話ししましたが、お客様にとっての主役はやはり「展覧会」です。1つひとつの展覧会を丁寧に発信し、新宿の街とのつながりを深めながら、いつでも安心して素晴らしいアートに出会える場所であり続けたいと思っています。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫・坂入美彩子 / 2026年8月27日 ]