大阪で生まれ、発展してきた人形浄瑠璃文楽は、2008年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
一方、朝鮮通信使は、江戸時代に12回、朝鮮から日本を訪れ、各地で様々な交流を持ったた両国の友好のシンボルで、こちらは現在、ユネスコ記憶遺産登録に向け申請中。
大阪が誇るこの二つの文化遺産を、貴重な館蔵品で展観する展覧会です。
展示は二室に分かれていて、まずは文楽から。こちらの見どころは二つ!
一つ目の見どころとして、文楽人形鬘師・床山として活躍された名越昭司氏(1931~2016)が後世に残すために制作した鬘見本が多数展示されています。
初めて知ったのですが、文楽の人形鬘は、公演が終了するたびに解きほぐされ、また新たに製作されるのだそうです。
とても華やかで美しいですね。
毛は、動物(ヤク)の毛や中国奥地の女性の毛が使われているそうです。
鬘は技術の進歩、材料の変化とともにより複雑で精巧なものに進化していき、特に名越氏は使用する道具や技術に工夫を凝らし、こだわりをお持ちだったとのこと。お使いになっていた道具の展示もあります。
もう一つの見どころは、戦前・戦後の文楽の広報資料です。
娯楽のバリエーションが広がった昭和初期の頃、文楽は存続の危機にまで陥り、国や民間の支援を受けたり、興行に工夫を凝らしたりしながら今日まで発展してきました。
人形浄瑠璃ポスター 四ツ橋文楽座 昭和16年(1941)6月 大阪歴史博物館蔵(中村知也氏寄贈)
戦時下では世相を反映した演目の上映や、戦争のニュース映画を劇場で流したことも。
展示の最後を飾る1970年の大阪万博の文楽のポスターが、次の大阪万博誘致の期待へとつながっています。
通路を挟んで別室に、朝鮮通信使の展示があります。
江戸時代、日本が唯一対等な国交を持った朝鮮から、ソウルを出発して江戸まで旅した通信使の一行は、途中、大阪にも立ち寄り、一週間程度滞在しました。
民間人との交流は制限されていたそうですが、朝鮮通信使の小童(お世話係のようなもの)が通りがかりの日本人から絵を描いてほしいと頼まれている様子を描いたものも。
朝鮮通信使小童図 江戸時代 1幅 大阪歴史博物館蔵(辛基秀氏寄贈)
また、大阪港に入港した一行の様子を記した一般人の貴重な資料も残っています。
旗の模様まで細かく記してあり、大変な興味を持って観察していたのでしょうね。
もちろん、幕府の公式の記録もきちんと残っています。
次回の朝鮮通信使がいつになるかわからないため、対応の方法などを細かく記録して残したものです。
おもてなし料理の献立を記録したものもあり、こちらに記されているメニューは、松茸や伊勢海老もあるフルコース!豪華ですよね。
基本的には、日本側が食材を提供して朝鮮の料理人が調理をしたそうですが、日本側がおもてなしをするケースもありました。
大阪を出て、京都まで船に乗って淀川を旅する一行の様子も描かれています。
大変豪華な船で、一行も驚いたと通信使の日記に残されているほど。
朝鮮通信使御楼船図屏風 江戸時代 6曲1隻 大阪歴史博物館蔵
その後の旅の途中で、朝鮮側の絵師が休息中に突然頼まれてお国のプライドを賭け?!描いた作品や、江戸幕府ご用達、狩野派の絵師が、朝鮮を出発する船を描いた異国情緒あふれる作品なども展示されていますので、会場でぜひご覧ください。
気になる朝鮮通信使の記憶遺産登録の結果ですが、11月ごろに判明する予定と伺いました。
会期中に発表されれば、展覧会もより盛り上がりを見せそうです!楽しみに待ちたいですね。
ところで、大阪歴博の10階エスカレーターホールから大阪城が一望できることをご存知でしょうか?
残念ながら今回は撮影できなかったのですが、全面ガラス窓から真正面に大阪城が見えて、迫力満点!
常設展示もスケールが大きく、見どころ満載で何度見ても飽きません。大阪の歴史を楽しみながら深く知ることができますので、特別企画展とあわせてご覧のうえ、大阪の魅力を満喫してくださいね!
エリアレポーターのご紹介
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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