近代日本画の巨匠 竹内栖鳳(1864-1942)は、20代半ば頃より、高島屋の画室に画工として勤務していました。東洋と西洋の絵画表現を融合し日本画を革新したといわれる栖鳳。実はその素地は、高島屋での仕事で培われたといっても過言ではありません。なぜなら、明治期の高島屋は、輸出用染織品の下絵制作のため、外国の雑誌や画集、写真集などを収集し、栖鳳ら若い画工と共に、世界で通用する“新しい絵”を研究していたからです。京都では唯一の海外事情に触れることができた画室は、若き日の栖鳳が研鑚を積んだ場でした。やがて、栖鳳監修のもと、高島屋が次々に製作した“美術染織品”は各国の博覧会で高い評価を受け、製品は続々と海を渡っていきました。当時、世界の人々を魅了した栖鳳と高島屋の仕事は、近代日本史において特筆されるべきものといえるでしょう。
その生涯を通じて高島屋とは深い関わりを持った竹内栖鳳。生誕160年を記念して開催する本展では、代表作から書簡まで、高島屋史料館所蔵品を余すところなくご覧いただきます。喜び、怒り、詫び、笑う、-知られざる「人間栖鳳」の素顔をご紹介いたします。
◆主な展示作品
※本展は会期をⅠ部・Ⅱ部に分け、展示作品を入れ替えて構成します。所蔵先の記載のないものはすべて高島屋史料館蔵。
・《ベニスの月》 1904年 絹本墨画(Ⅰ部展示)
・《雀》 年代未詳 杉戸着彩(Ⅰ部展示)
・《鶏の図》 年代未詳 杉戸着彩(Ⅰ部展示)
・《白梅》 1941年 絹本着彩(Ⅰ部展示)
・「竹内栖鳳年譜屏風」 1943年 海の見える杜美術館蔵(Ⅰ部展示)
・《アレ夕立に》 1909年 絹本着彩(Ⅱ部展示)
・《富士》 1893年 絹本着彩(Ⅱ部展示)
・《小心胆大》 1909年 絹本着彩(Ⅱ部展示)
・《国瑞》 1937年 絹本着彩(Ⅱ部展示)
・「栖鳳絣」 大正期 個人蔵(Ⅰ・Ⅱ部展示)