古くから親しまれてきた、日本ならではの和歌。優れた和歌は文字として表されるだけでなく、絵画や工芸も含めてさまざまに表現され、日本美術とも密接に関わってきました。
本展では
根津美術館が所蔵する古筆、屏風絵、蒔絵の硯箱、茶道具などのなかから、和歌に関係する名品を紹介。重要文化財9件を含め、30件余りを展観します。
会場展覧会の目玉は《扇面歌意画巻》。和歌100首と各歌を連想させる扇面画を100図描いた江戸時代の絵巻で、修復後初のお披露目となりました。
和歌の意味内容を絵画で表現した「扇の草子(そうし)」と称される作品。かなり長い絵巻ですが、本展は和歌がテーマということもあり、一挙に100図すべてを公開。長い展示ケースが華やかなムードに包まれます。
《扇面歌意画巻》会場には3点の工芸品も展示。もちろん和歌に関係するもので、意匠の中に仮名文字や漢字を隠し、全体を通してみることで特定の和歌を読み取るという趣向です。
例えば《花白河蒔絵硯箱》は、桜の下に佇む公達の意匠と、絵の中に隠されている「花・白・河」の文字。新古今和歌集の「なれなれてみしはなこりの春そとも なとしら河の花の下かけ」が読み取れます。
他の2点も文字が隠されていますので、ぜひ会場で探してみてください。
最後の1点が《花白河蒔絵硯箱》本展は展示室1のみで開催。同時期に、展示室2では江戸時代から明治期にかけての小袖(袖口が小さい今日の着物の原形)を展観する「小袖の彩り」、展示室5では100種類余の椿を色鮮やかに描いた寛永年間の絵巻「百椿図」、展示室6では吉祥や干支をテーマにした道具を取り合わせた「初釜 来福を願う」が開催中です。
展示室2「小袖の彩り」と、展示室5「百椿図」なお、
根津美術館では恒例となった「はじめての茶席」を今年も実施します。日頃、お茶に馴染みのない方でも気軽に参加できる茶席を、庭園内の茶室「披錦斎」にしつらえたお茶席で3月20日(木)に開催。美術館で申し込みを受け付けていますので、興味のある方は
根津美術館公式サイトでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月8日 ]