展覧会は序章のタイムスリップシアターから。TBSドラマ「JIN -仁-」に出演した俳優の大沢たかおさんによる案内の後に、本会場に進んでいきます。
第1章 病はいつの時代も、身分の貴賤なく、人々を襲う。
第2章 東から西から~医術の伝来
第3章 医は仁術~和魂漢才・和魂洋才の医
第4章 近代医学と仁
第5章 現代の医
日本の医術は、渡海した僧などによる中国からの伝来と、南蛮人による西洋からの伝来が融合したもの。安定した社会だった江戸時代の日本では、医の知識は一部の人が独占するのではなく、社会全体に広まっていきました。
西洋からもたらされた解剖書や、薬看板など会場には、多数の解剖絵図が紹介されています。
西洋の解剖図には、人体がポーズをとった姿で骨格や筋肉が解説されるスタイルが多く見られますが、江戸時代の解剖絵図は頭がなく、身体だけが地面に横たわっているのが一般的です。これは、斬首された刑死体を解剖しているためです。
「東門先生観臓図鑑」も、胴体だけの観臓(解剖)図です。まだ大腸と小腸が区別されていないなど、稚拙な面も見られます。
「東門先生観臓図鑑」大小の立体的な人形類も目をひきます。
茶色の骨格標本は、木で作られた「奥田木骨」。「胎児模型」は、明治初期の産婆(助産婦)教育用です。現存する唯一の医学生き人形「五臓六腑生き人形」は、薬屋の看板や見世物に使われたと思われます。
男女が交換できる人体・内臓模型「解体人形」は、なんと信濃国(長野県)の農民が作ったもの。解体新書の刊行から日が経つと、山村の農民にまで解剖の知識は広まっていたのです。
順に「奥田木骨」「胎児模型」「生き人形」「解体人形」江戸時代も今でも、医術は「可視化」がキーワード。第5章では、最先端の技術を用いた現代医学が紹介されています。
壁面で紹介されている臓器モデルは、実際の患者からCTスキャンした画像データをもとに、3Dプリンターで作成したもの。医師は患者の状態を目で確認しながら、事前に手術をシミュレーションすることが可能です。
イベントで使われるプロジェクションマッピングは、外科手術や医療教育にも活用されています。展覧会ではその技術を応用、実在の人物のCTデータで作成した映像を等身大の模型にマッピングし、人体の仕組みを説明しています。
第5章「現代の医」エンディングの映像シアターでは、鉄拳さんによるオリジナル描きおろし「パラパラ漫画」も上演中。図録も楽しいデザインですので、ぜひ会場でご確認ください。背表紙が無い和装本のスタイルです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年3月14日 ]