19世紀後半に起こった、形骸化したアカデミック絵画への反発。その動きはフランスでは印象派が生まれたのに対し、イギリスはラファエル前派というかたちで表面化しました。
第1章は「ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」。ラファエル前派創始者のひとり、ジョン・エヴァレット・ミレイは、画業初期の貴重な作品も含め、本展最多の8作品が出展されています。
薄明りが差す自室で髪とく美しい少女は、ダニエル・マクリースの《祈りの後のマデライン》。文学(同時代の詩)を題材にした作品で、クローゼットの中に決死の覚悟で忍び込んだ恋人のポーフィロが隠れている場面です。
第1章「ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」2章は「古代世界を描いた画家たち」。ヴィクトリア朝の人々は自らを古代ローマから繋がる後継者と見なしていた事もあり、古典的な世界を題材にした絵画は好んで描かれました。
アーサー・ハッカーの《ペラジアとフィラモン》は、歴史小説に基づいた作品。死を目前にした裸の女性、見つめる僧衣の男は彼女の兄、遠方には不吉なハゲタカの姿も見えます。1887年に発表され、熱狂的に受け入れられた作品です。
第2章「古代世界を描いた画家たち」3章は「戸外の情景」。この章は作品数が多くありませんが、巣とその中身に執着したため「鳥の巣のハント」と呼ばれたウィリアム・ヘンリー・ハントの作品などが紹介されています(ウィリアム・ホルマン・ハントとは別人です)。
第3章「戸外の情景」最後の第4章は「19世紀後半の象徴主義者たち」。後期ヴィクトリア朝に入ると、エドワード・バーン・ジョーンズを中心とした「ラファエル前派第二世代」らが活躍。さらに時代が進むと、ラファエル前派の画家たちとの直接の関係性はないものの、その流れを継承する作家も活動をはじめます。
ラファエル前派の画家たちが没した後の追討展で見た作品に感化されたのが、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス。神話を題材にした格調高い作品で、ラファエル前派の復興者とみなされています。展覧会のメインビジュアルでもある《デカメロン》を含め、会場後半で3点並んで紹介されています。
第4章「19世紀後半の象徴主義者たち」「自然に忠実に」の標語のもとで活動したラファエル前派。グループとしての活動は短い期間でしたが、その精神は後年も支持され、やがて象徴主義という大河に繋がっていきました。
東京展の後は、2016年3月18日(金)~5月8日(日)に
山口県立美術館に巡回します(山口展が最終会場です)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年12月21日 ]※2月11日(木)は先着50名様にポストカードプレゼント、2月14日(日)は先着50組100名様クリアファイルプレゼントもあります。
■英国の夢 ラファエル前派展 に関するツイート