MIHO MUSEUM 「極(きわみ) 大茶の湯釜展 ─茶席の主─」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2016年6月3日
日本の金属工芸の茶の極―湯釜
国が指定する重要文化財の茶の湯釜すべてが集結し、茶の湯釜以前の湯釜から茶の湯釜の発展まで、さらに湯釜が盛行する過程を全109点の釜をもとに系統的に眺めることができます。
《鶴の釜》、大西浄清、江戸時代、17世紀 大西清右衛門美術館
日本の金属工芸の極みといえる茶の湯釜。「釜一つ持てば茶の湯者」と言われるほど、釜は茶道をする上で欠かせない道具です。幕末の大老の井伊直弼は茶人でもあり、著作『茶湯一会集』の中で、「釜一口ニて一会の位も定まる」と述べています。
本展覧会は、茶の湯釜研究者である原田一敏氏(東京藝術大学大学美術館教授・元国立博物館金工室長)の監修によって構成されました。
これまで茶の湯釜のみをテーマにした展覧会は、室町時代に芦屋で作られた釜の展示が行われたのみで、大規模なものはありませんでした。しかし、原田一敏氏監修のもと、本展覧会では奈良時代から江戸時代に至るまでの釜を一堂に会することで、その違いを体感できる展示となっています。
ここでは、釜の胴の部分に注目し、室町時代から江戸時代に至るまでの釜の変遷をたどっていきます。
芦屋釜
《梅花散文真形釜》、芦屋、室町時代、15世紀、重要文化財 個人蔵
満開の梅の花が胴部分一面に咲き誇っています。
もう一点、ご紹介します。
《獅子牡丹図真形釜》、芦屋、室町時代、15世紀 五島美術館
大輪の牡丹と躍動的な唐獅子が描かれています。このように芦屋釜は釜の胴の部分に見られるように、絵紋様が美しい釜が多いです。
天明釜
《二重肩釜》、天明、室町時代、16世紀 栃木県立博物館
鏡餅のような胴部を持ち、天明釜には岩のような肌が特徴です。
江戸期の釜
《井桁釜》、大西定林、江戸時代、17-18世紀 東京国立博物館
肩に部分に「井」の字型に桟を渡し、桟が交差する角に目を覆う猿、その対角線の角に口を押える猿が付いています。釜のつまみが、葉の上で耳をふさぐ猿となり、有名な三様の姿をした猿の像がそろいます。江戸に作られた釜は芦屋と天明の釜の特徴を併せ持つ様々なデザインがあります。
釜は胴やつかみ以外にも、口造りや鐶付の部分に、時代や作られた場所によってデザインの違いが表れているので、そうした部分にも注目して鑑賞してみるのもおもしろいかもしれません。
会場風景
《伝土佐光信筆、茶釜下図(写本)》、江戸時代 東京藝術大学附属図書館
《伝土佐光信筆、茶釜下図(写本)》(拡大) 東京藝術大学附属図書館
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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