MIHO MUSEUM「ムガール皇帝とマハラジャの宝石」
撮影・文 [エリアレポーター]
白川瑞穂 / 2016年9月28日
カタールのシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アル サーニ殿下のコレクションからムガール帝国の時代から現代までのインド宝石181点の名品を選りすぐり、宝飾デザインの軌跡と豊かなインド文化を概観するインドジュエリー展です。
18世紀までダイヤモンドはインドが唯一の産出国だったそうです。石を可能な限り大きく重く残すカット方法、宝石の下に金箔や銀箔を置いて光を反射させて見せるインド特有の技法によるジュエリーは独特の美しさ。
左と真ん中はバラ水の散水瓶で正式な訪問の際の礼儀としてバラ水を撒くためのもの。右は蠅払いで、どれも王宮や貴族の館で使用されていました。
ダイヤは破壊されない硬さであることから、古来インドでは伝統的に男性の石とされ、権力と富の象徴として身につけられてきました。こちらはターバン飾りで、ナワナガル藩王国のマハラジャ、ランジートシンジー・ビバージが、王位就任のために発注したものです。
メインビジュアルのハイデラバード君主のネックレスは、ハイデラバードの君主が正式な儀式で身につけたもので、王国の富と力を表すものでした。
また、宝石を身につけて魔除けにしたり、運を呼び込んだりといった行為は今でも続いていますが、装飾品であるだけでなく信仰文化の象徴でもありました。
95万個の真珠や宝石を使用した天蓋。バローダの君主が預言者ムハンマドの墓用に制作を命じたものです。
圧巻が、世界有数の5個のダイヤモンドが眩く煌めくコーナー。
あまりのサイズ感に、一瞬本当にダイヤモンド?と思ってしまうのですが、輝きと複雑な色彩が本物の証であることを物語っています。世界最大のカット・ブルーダイヤモンド、アイドルズ・アイをはじめ、実物をぜひご覧下さい。
16世紀にインドを統治したムガール皇帝や、その後各地を統治したマハラジャは、ヨーロッパとの文化的交流を盛んに行い、西洋のカット方法やデザインが好まれたことから、ヨーロッパ的なイメージが取り込まれていきました。
こちらはインドの彫刻エメラルドをヨーロッパ風にアレンジした初期の作品、ブローチもしくは髪飾り。
20世紀にはカルティエをはじめとするヨーロッパの宝石ブランドとインドジュエリーのコラボレーションが発生します。
こちらはカルティエのネックレス。
更に21世紀、現代の技術を駆使したジュエリーも展示されています。
左はペアバングルでジャスミンの花輪を真珠でデザインしており、約1500点の古代天然真珠からのよりすぐり。
右も塩水産古代天然真珠のネックレスでスイス宝石学会鑑定書添付書類に「凄い宝」と絶賛されたそうです。
12月11日まで。インドの歴史と多様な文化との交流から生まれた日本初公開となる名品の数々を目にすることができる貴重な機会をどうぞお見逃しなく。
エリアレポーターのご紹介
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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