こんな綺麗な青、見たことありますか?
これまで台北にある國立故宮博物院から貸し出されることのなかった神品《青磁無紋水仙盆》。この極めて珍しい青磁器をはじめとした北宋汝窯青磁水仙盆5点と、清朝の皇帝がそれを手本にして作らせた、景徳鎮官窯の青磁水仙盆1点が初めて一堂に会するという豪華な展覧会が、大阪市立東洋陶磁美術館にて開催中されています。
水仙盆を始めとする汝窯の青磁は、歴代皇帝や文人たちに愛されてきました。中でも深く関わっていたのが清の乾隆帝でした。
《青磁無紋水仙盆》 汝窯 北宋時代(11世紀末~12世紀初)以下全て台北 國立故宮博物院所蔵
青磁水仙盆の中で最もすぐれているとされる「無紋」の《青磁無紋水仙盆》です。
青磁とは素地や釉薬に微量の鉄分を含み、還元炎で焼成して青緑色に発色させた磁器のこと。発祥地は中国で、日本の有田焼にも通じる焼き物です。
作品のタイトルの横にある「汝窯(じょよう)」とは、宮廷用の青磁を焼くための窯のことで、中国北宋の末期(11世紀末~12世紀初)に主に利用されていました。
現存する汝窯の青磁は世界で約90点と、極めて少ないのが特徴です。
《青磁無紋水仙盆》 汝窯 北宋時代(11世紀末~12世紀初)
こちらが今回の展示で一番の目玉となる《青磁無紋水仙盆》です。
「雨過天青」、すなわち雨上がりの空の色を見事に体現しているこの作品は、釉に貫入がほとんど見られず、汝窯で作られた青磁の中で最も優れた「無紋」に該当します。縁の方はうっすらとピンクがかっていて、とても柔らかな印象を与えてくれます。
清朝の宮廷コレクションの中でも、乾隆帝はこの作品をとりわけ賞玩し、裏には自ら詠んだ詩を刻ませています。
実はこの水仙盆、用途は未だ不明で、犬猫の餌入れ、もしくは筆洗だったのではないかと言われています。皆さんなら何を入れて使うでしょうか?
(左から)《乾隆帝筆「御筆書畫合璧」》 清時代 乾隆年間(1736~1795) / 《紫檀描金台座》 清時代 乾隆年間(1736−1795)
こちらは先ほどご紹介した水仙盆に合うようにと、乾隆帝が作成を命じた紫壇製の豪華な引き出し付きの台座、そしてその引き出しに収められていた、「書畫合璧(しょがごうへき)」という本です。
この本は宋代の四代書家の作品を元に、乾隆帝自らが写したと言われています。四代書家の作品を隣に置いて描いたとはいえ、達筆です。
《倣汝窯青磁水仙盆》景徳鎮官窯 清時代 雍正~乾隆年間(18世紀)
この水仙盆は先ほどご紹介した《青磁無紋水仙盆》へのオマージュとして、宮廷専用の窯で作られた模製です。当時の最高レベルの技術が惜しみなく使われていますが、《青磁無紋水仙盆》と比べると厚みがあり、少し重量感があります。そして微妙に色合いも異なり、こちらの方が若干白みがかっている印象です。
この作品は色彩の微妙な違いを体感してもらえるように、なるべく自然光に近い照明で照らしています。また水仙盆が置かれた展示ケースの下には鏡が置かれているので、裏に書かれた文字も見ることができます。
こちらは展覧会風景です。
(左から)《青磁水仙盆》 汝窯 北宋時代(11世紀末~12世紀初) / 《青磁無紋水仙盆》 汝窯 北宋時代(11世紀末~12世紀初)
この展覧会では大きな展示ケースにどーんと1点ずつ展示されています。
僅か6点のみが展示されている特別展ですが、6点が同時に見られる展示は今後ないかもしれません。この機会にぜひご覧ください。
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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