パナソニック 汐留ミュージアム「ジョルジュ・ルオー展」
文 [エリアレポーター]
松田佳子 / 2018年9月28日
サブタイトル「聖なる芸術とモデルニテ」は、この展覧会の重要なテーマなのでしょう。
敬虔なカトリック教徒だったルオーの作品はキリスト教的なものがほとんどです。
ですから信者ではない多くの日本人にとってはわかりにくいものであるかもしれません。
一方「モデルニテ」とは、現代性と訳すことができ、宗教や時代を超えて訴えてくるものということでしょうか。
第1章は、銅版画集「ミセレーレ」からです。
狭い空間に12枚のモノクロームな作品が並び、落ち着いた空間です。
それぞれにタイトルがついていてNo.5と6の作品の「生きるとはつらい業…」「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう」の2作品は、誰の心にも響くものです。
銅版画集「ミセレーレ」
銅板や、版画集に採用されなかった作品も展示されていて「ミセレーレ」の世界観をより楽しむことができます。
銅版画集「ミセレーレ」銅板
第2章では、キリストの顔を描いた「聖顔」や美しい「ヴェロニカ」などの画面いっぱいに引き伸ばされた「聖なる顔」が続きます。
苦難の一生だったキリストの顔は苦しみよりも穏やかな微笑みを湛えているようで、思わず声をかけたくなるような親しみも感じられます。
《聖顔》の連作
右《ヴェロニカ》他
第3章では「受難」がテーマです。
十字架やハートの単純化されたデザインが温かみを感じさせます。
ルオーの独特の厚塗り表現は、塗って乾かしては、削ってまた重ねるというテクニックを使っているそうです。ポテッとした質感がぬくもりを与えているのでしょう。
左《キリストの頭部》中央・右《聖心》
最終章では、キリストのいる風景画が続きます。
赤や黄色、青緑といった色彩の美しさが際立ちます。
左から《秋の終りⅤ》《キリスト教的夜景》
出口付近では、当館所蔵のルオーの初期作品が展示されています。
これまで見てきた色とりどりの温かみのある作品とは異なり、暗い色調の細かな筆致の初期作品と見比べるのもまた楽しいかと思います。
エリアレポーターのご紹介
|
松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
|
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?