オキーフとその時代

20世紀初頭、ヨーロッパで始まったフォービズムやキュービズムといった前衛芸術運動に触発されたアメリカの芸術家たちは、それまでにない斬新な表現を生み出していきました。ひとつの表現様式にとらわれることなく、それぞれに新しい個性を主張したこの時期は、アメリカ美術においてもっとも刺激的で変化に富んだ時代でした。 抽象表現の先駆的存在であったアーサー・G・ダヴ。アメリカの風土と文化に生き、繊細で色彩豊かな表現で独自の世界を表現したジョージア・オキーフ。また、当時のアメリカンスピリットを内在させた表現が特徴のスチュアート・デイヴィス。写真家としても活躍し、写真を絵画表現に実験的に採り入れた作品を描いたチャールズ・シーラー。彼らの作品には、都会的なイメージや、郊外の生活や風景のすばらしさ、社会的、政治的な問題など、当時のアメリカを背景にした多種多様な主題や表現の広がりがみられます。 これらの新しい作品の真価をいち早く認めたのが、ニューイングランドの実業家ウィリアム・H・レーン氏でした。彼は、精力的にコレクション形成を行うとともに40回以上に及ぶ展覧会を行い、まだ広く知られていなかったモダンアートの魅力を紹介しました。そして、その志は、1990年にコレクションの90点を寄贈したことによりボストン美術館へ受け継がれ、館内に作品を常設展示する「レーン・ギャラリー」を開設しました。 このたび、アメリカ国外でまとまった形では初めて紹介されることになったレーン・コレクションは、アメリカで1、2の規模を誇るアメリカン・モダニズム作品の宝庫として知られています。本展ではそのコレクションより19作家46作品を通して、アメリカ美術がダイナミックに変化した時代の多様な表現を紹介します。