杉浦慶太は、岡山県津山市(旧勝北町)出身。大学在学中に写真表現の持つ魅力に目覚め、卒業後上京し、広告写真スタジオに入社。商業写真の世界で写真技術を学びましたが、現代アートの魅力に惹かれ、その可能性をカメラのレンズを通して強く求めていくようになります。2005年には勤めていた会社を退職し帰郷。本格的な制作活動を開始して以降、地元を拠点にその活躍は目覚ましく、2008年には「GEISAI MUSEUM
2」に出品。日没後の森を撮影した作品が審査員賞(ヴィクターピンチュック賞)を受賞。また、同年「GEISAI
11」では、「総合第三位(銅賞)」を受賞。更に、翌年の第2回岡山県新進美術家育成「I氏賞」では、「グランプリ(大賞)」を受賞するなど一躍注目。活動は国内・外を問わないグローバルな活躍の場を拡げている期待の若手写真家です。日没後の闇に包まれる地元の森を撮ったシリーズ「森」は、暗く静寂な表情をリアルに写し出す一方で、湿気を帯びた森の中の木の枝やツルが観る者の身体にまとわりついてくるような感触で迫ってくる作品です。また、画面一杯に雲だけを撮った「雲(Daydream)」のシリーズ作品では、禅の思想にヒントを得て作品を制作したといわれ、時間と空間の世界を物質(写真)に結び付けて提示した作品です。本展では、これら「森」と「空」の旧作シリーズを、奈義MOCAの二つのギャラリーで新たに再編し、提示していきます。普段無意識に見過ごされている周辺の自然を日常的に擬視することで、そこに内在する本質に迫る制作アプローチから生まれた杉浦の鋭利で豊かな世界観は、物質社会の中で生きる私たちへの深い問いかけでもあります。