「デジタル・シャーマニズム」では,市原えつこによる,日本の民間信仰とテクノロジーを融合させることをテーマに,「デジタルシャーマン・プロジェクト」および「都市のナマハゲ - NAMAHAGE in Tokyo(ISIDイノラボとの共同プロジェクト)」のふたつのプロジェクトを紹介します.
「デジタルシャーマン・プロジェクト」は,3Dプリンターで出力した故人の顔を装着した家庭用ロボットに,故人の言葉や身振りなどの身体的特徴を憑依させるプログラムを開発し,遺族と死後49日間を過ごすことで,新しい弔いの形を提案するものです.魔術や信仰,科学やテクノロジー,この両者は,相反するもののように見えて,どちらも「ここにはない何か」を現前させたり,そう感じさせたりする,という性質において,じつは極めて親和性が高く,近い場所にいるという考えにもとづいて,科学技術の発達した現代に,新しい祈りの形,葬り方の形を提案するものとして発想されました.
「都市のナマハゲ」は,秋田県男鹿市で200年以上伝承されてきた「ナマハゲ行事」が持っている,相互監視による集落の維持,子供から大人へのイニシエーション,家族の絆の強化といった機能を再解釈し,ソーシャルメディアによる相互監視や町中に張り巡らされた監視網により蓄積されたデータベースをもとに,都市に実装する試みです.
市原えつこ
1988年愛知県生まれ.早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業.日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き,テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する.インパクトの強い作品性から,国内の新聞・テレビ・Web媒体,海外雑誌など,多様なメディアに取り上げられている.主な作品に,大根が艶かしく喘ぐデヴァイス《セクハラ・インターフェース》,虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》,家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ49日間共生できる《デジタルシャーマン・プロジェクト》などがある.2014年 文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出,2016年 総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択.
【アーティスト・トーク 市原えつこ】
日時:2017年1月29日(日)午後2時より
出演:市原えつこ
ゲスト:なかのひとよ(サザエBOT)
司会:畠中実(ICC)会場:ICC 4階 特設会場
定員:150名(当日先着順)
入場無料
http://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2017/open-salon-artists-talk-ichihara-etsuko-jan-29-2017/