旅行するとつい考えがちな「おみやげ」。欧州で用いられる「スーベニア」は、自分自身の旅の思い出に「おみやげ」を購入することを示すようで、他人への贈与のために購入するのは、日本人独特の考え方だとされています。
展覧会では、旅の思い出を他者へ伝えることから、自分の思い出として集められたものを通し、日本における「おみやげ」文化の変遷を展示、紹介していきます。
第1章「アーリーモダンのおみやげ」では、近世におけるおみやげの成立と展開について。ここでのアーリーモダンは、江戸時代を示します。
近代以降に発達した観光文化の特質の多くは、江戸時代に育まれました。展示されているのは、景勝地の絵図や道中記など。得意げに旅の思い出を話している当時の町民たちの姿が思い浮かびます。
1章「アーリーモダンのおみやげ」・2章「観光地のブランド化とおみやげへの波及」続く第2章では、旅の目当てとなる場所や行事をおみやげにした事例を紹介しています。
有名な行事や景勝地がパッケージになったお菓子の箱など、一度は頂いた、あるいは、贈ったことがあるものが展示、紹介されています。
第3章では、観光地別で個性豊かなおみやげが展示されています。伝統工芸品のほか、その土地所縁の武将やご当地キャラクターなどが「おみやげ」になっています。
3章「現代におけるおみやげの諸相」第4章「旅の文化と多様化とおみやげの展開」では、個性的なおみやげを紹介。海外でしか手に入らない珍しいおみやげや、ご当地名産のレトルトカレーなどが展示されています。
北海道の《オホーツク流氷カリー》は、青色のカレーで、流氷に見立てたホワイトチキンが中に入っているそうです。一体、どんな味がするのでしょうか。視覚と味覚で楽しめるユニークなおみやげが並びます。
4章「旅の文化の多様化とおみやげの展開」・5章「おみやげからコレクションへ」第5章は、今後のおみやげの展望について。購入されたおみやげの行く末を、展示作品から考えていきます。
旅の思い出として、大事に取っておいても時間が経つとガラクタになってしまう物も多くあります。この章は「おみやげ」の在り方を再考する場でもあります。
これからお盆休みに出かける多くの方が、「おみやげ」を自分のために、あるいは、親しい人のために買うでしょう。「おみやげ」を買う前に、旅で得た物語と結びつけてみてはいかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年7月9日 ]