会場の最初は我が国を代表する絵本作家である、いわさきちひろをまとめて紹介するゾーンから。ちひろが好きだったアンデルセン童話の絵本をはじめ、日本の童話や昔話を題材にした作品、若者向けにうす墨と鉛筆で描いたモノクロームの絵など、さまざまな作品が並びます。
会場の一角には、ちひろのアトリエも再現されています。ちひろは下石神井のアトリエで、画家としてのほとんどの時期を過ごしました。
いわさきちひろのゾーン続いて、世界各国の絵本が紹介されます。日本を筆頭に隣国の韓国、中国。ついでベトナム、スリランカ…さらに欧米、アフリカ、ラテンアメリカの諸国まで計25カ国、53名の作品が展示されています。
きわめて自由度が高い絵本の世界。地域固有の文化に加えて作家の個性も現れるため、展示されている絵も百花繚乱の装いです。
韓国~中国の作品『はらぺこあおむし』などで知られるエリック・カール(アメリカ)は、画材として使っているティッシュペーパーも展示されています。
カールは時間を見つけては、画材作りに取り組んでいます。筆やスプレーで薄紙に色をつけ、アトリエ壁面の大きな引き出しに色調ごとに保管。絵を作るときにはこの引き出しから薄紙を選び、下絵にあわせてカッターで切り、コラージュを進めています。
エリック・カールの画材と作品絵本を手に取って見られるコーナーもあり、その作品を体験することもできます。何気なく手に取ってみたのが、キム・ドンソン(韓国)の『かあさんまだかな』。寒さで鼻の頭が赤くなっても、外でかあさんを待ち続ける民族衣装の坊や。どこか懐かしい感じが、なぜか涙腺を刺激しました。
1976年に開館した
損保ジャパン東郷青児美術館。1987年にはゴッホの「ひまわり」購入したことで大きな話題を呼びました。現在はゴーギャン、セザンヌ、ルノワール、ピカソなどを含めた収蔵作品は650点以上に拡充。最近では、2011年に特別展「モーリス・ドニ -いのちの輝き、子どものいる風景-」を開催した縁で、新たにドニの作品の寄贈も受けています。
所蔵作品のゾーン損保ジャパン東郷青児美術館は、東京・西新宿にある損保ジャパン本社ビルの42階。エントランス入ってすぐの展望回廊からの眺望も見どころのひとつで、取材当日はやや曇天でしたが、東京スカイツリーと東京タワーが同時に見られる眺めは絶景です。(取材:2012年7月10日)
| | かあさんまだかな
イ テジュン (著), キム ドンソン (イラスト), チョン ミヘ (翻訳) フレーベル館 ¥ 1,260 |