森美術館開館翌年の2004年から開催されている「六本木クロッシング」。今回ははじめて、海外から2名のキュレーターを迎え、森美術館の片岡真実チーフキュレーターの3名による共同企画となりました。
参加アーティストは、海外在住または海外出身の日系人も含めて29組。日本ではじめて紹介されるアーティストも含まれています。
会場入口から
丹羽良徳(1982年生)は地域や社会に介入するパフォーマンスやプロジェクトを行っているアーティスト。
《日本共産党にカール・マルクスを掲げるように提案する》は、日本共産党の支部などを訪ねて、共産主義の父であるカール・マルクスの肖像写真を掲げるように依頼する行為を映像にした作品です。
「日本共産党の現在の方針とマルクス主義の融和を試みた」というコンセプト。突然の訪問に困惑する人々の姿がユーモラスに映し出されます。
丹羽良徳《日本共産党にカール・マルクスを掲げるように提案する》 2013年 Courtesy: Ai Kowada Gallery, Tokyo
柳幸典(1959年生)の「アント・ファーム」シリーズは、文字通りアント=アリの動きを利用した作品。
砂絵で作られた万国旗がチューブで繋がれ、中をアリが移動することで、国旗の意匠が崩壊していきます。
冷戦構造が崩壊した1990年代の初頭から発表されたこのシリーズは、柳幸典の代表作です。
柳幸典 「アント・ファーム」シリーズ《ユーラシシア》 2001年
海外からキュレーターを迎えたのも、日系アーティストを含んでいるのも、グローバルの中での日本アートの位置付けを検証する意図から。
参加アーティストは70年~80年代生まれの若手が中心ですが、赤瀬川原平をはじめ戦後の前衛美術を牽引してきた世代も何人かピックアップ。並列に紹介することで世代を超えた対話も目指しています。
会場
タイトルにつけられている「アウト・オブ・ダウト」は、社会通念や既存の制度に向けられた疑念(ダウト)から。
震災を機に、今までの社会のあり方に対して多くの疑念が突きつけられた中で、いかに生産的な議論を生み出せるかという問題提起から設定されました。もちろん、簡単に答えが出るようなものではないでしょう。
結論が無くても「議論をするための場」として設けられた「ディスカーシブ・プラットホーム」をはじめ、関連プログラムも多数。興味がある方は、公式サイトで詳細をご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年9月20日 ]