本展は水の風景そのものや、水辺での市民の姿を描いた印象派の秀作、約80点を紹介する企画です。
まず第1会場では
東京富士美術館の所蔵作品を紹介。序章「印象派の先駆者たち ─ 近代風景画の地下水脈」にはホイエン、ターナー、クールベなどによる水辺の風景が並びます。
東京富士美術館の看板娘ともいえるのが、マネの《散歩》。病気療養中のマネを見舞いに来た女性を、特有の素早い筆致で捉えました。
第1会場渡り廊下を通った先の企画展示室が、第2会場です。
第1章「セーヌ河畔の憩い ─ パリ近郊の川辺を描く画家たち」は、シスレーが描いた水辺の風景からスタート。シスレーは生涯にわたってほぼ風景画だけを描き続け、中でもセーヌ川やロワン川の景色を繰り返し描いています。
第2会場への入口から続いて、展覧会のメインビジュアルになっているルノワールの傑作《ブージヴァルのダンス》が登場。ボストン美術館から来日しました。
パリ近郊の水辺の行楽地ブージヴァルを舞台に、踊りながら顔を近づけて迫る青年と、避けるように目を背ける少女。二人の間の微妙な空気感がこちらにも響いてくるようです。
とても魅力的な少女のモデルは、マリー=クレマンティーヌ。描かれた当時は17歳でしたが、同じ年に私生児を出産しています。その子が後の画家、モーリス・ユトリロ。父親は不明ですが、ルノワールだという説もあります。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ブージヴァルのダンス》さらに進むと、モネの作品が次々に展示されています。中でも円形と矩形の《睡蓮》は隣で紹介されています。
ともにモネが1909年5月にパリで開いた個展「睡蓮、水の風景の連作」に出展されたもの。48点の睡蓮が並んだこの個展は大好評で、会期を延長して行われました。円形の作品はサン=テティエンヌ近代美術館、矩形は東京富士美術館による所蔵です。
円形と矩形のクロード・モネ《睡蓮》が並ぶ最後は第2章「ノルマンディ海岸の陽光 ─ 海辺を描く画家たち」。海辺を舞台にしたモネ、ブーダン、ピサロ、そしてカイユボットなどの作品が並びます。
第2章「ノルマンディ海岸の陽光 ─ 海辺を描く画家たち」日本国内をはじめアメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、スイス、カナダ、オーストラリアの世界8か国40館から作品が集まった豪華な展覧会で、見応えたっぷり。
東京富士美術館は常設展も超強力なラインナップのため、時間を長めに取ってお出かけください。
なお本展は
東京富士美術館の後に
福岡市博物館(2014年1月15日~3月2日)、
京都文化博物館(2014年3月11日~5月11日)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月29日 ]