ピカソが「20世紀最後の巨匠」と称賛したバルテュス。生前は1962年の初来日以降7度も来日し(妻の節子夫人が日本人であるほか、1991年には高松宮殿下記念世界文化賞も受賞しています)、各所で個展も開催されていますが、2001年に92歳で亡くなって以来、国内での個展開催は約20年ぶりとなります。
会場入口は、バルテュスの巨大なポートレートからバルテュスの代名詞ともいえるのが、少女を描いた一連の作品。《夢見るテレーズ》は代表作のひとつで、最初の少女モデルであるテレーズ・ブランシャールをパリで描きました。
目を閉じて両腕を頭上で組み、膝を立て下着を無防備に晒す少女。無垢から性に目覚める過渡期の少女に、バルテュスは「完璧な美」を見出しました。
《夢見るテレーズ》バルテュスはパリ生まれですが、二度の世界大戦の影響もあって、フランスやドイツ、スイスの各地を転々とするコスモポリタンでした。
手鏡を見た少女を描いた《美しい日々》は、ジュネーブ近郊で描かれた作品。モデルもスイスのオディル・ビュニョンです。
右胸を半分のぞかせて足を伸ばし、手鏡をうっとりと眺める少女。右側では燃え盛る暖炉に男が薪をくべており、不穏な緊張感が漂います。
《美しい日々》展覧会には、40点以上の油彩画を含め100点超の作品が出展されています。公開される事が少ない個人所蔵の作品も多く、国内ではほとんど見ることのできないバルテュス作品が並びます。
《地中海の猫》も個人蔵の作品で、バルテュスも常連だったパリのシーフード・レストランのために描かれたもの。猫は少女とともにバルテュス作品の重要なモチーフです。
100点超の作品が並ぶ会場会場にはバルテュスが晩年を過ごしたアトリエも再現されたほか、篠山紀信が撮影した写真も展示されています。
ポーランド貴族の血を引くというバルテュスは、老齢ながら実にダンディな佇まい。印象深い言葉とともに、愛用品も紹介されました。
会場最後は篠山紀信による写真バルテュスはフランス知識人の熱烈な支持を受ける一方で、描かれた絵画の主題ゆえに、批判や誤解にさらされることも少なくありません。今シーズン最大の注目展。他者の追随を許さない独自の世界は、ご自分の目で評価してください。
なお本展は2014年7月5日(土)~9月7日(日)、
京都市美術館に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月18日 ]